再生支援にあたって大切なことは、再生支援企業の実態をよく見て、丁寧に取り組むことだ。資本市場の中では単に会社を、株券を売買するという議論になりがちだが、それは本質的な話ではない。

 知識集約化が進んだ日本の企業体では、収益の源泉は設備などではなく、人材であり人間の集団である。結局、M&Aも人間集団が企業の壁を越えて移動・融合するということであり、資本市場で株式の51%を買ったからといって、人の心が買えるわけではない。

 つまり会社が人の集団だという事がわかっていれば、M&Aの成功確率は高まるし、わかっていなければM&Aによる企業価値の向上など実現できない。欧米でさえ、M&Aによる企業価値の向上がうまくいったケースは実際2~3割しかない。そこにM&Aの難しさがある。

 企業を再生機構の枠組みの中で買収しようとしても、本当に価値を生んでいる人たちに嫌われたら、収益が出なくなり企業価値は生まれない。

年功序列の中で
トップを選ぶナンセンス

 年功序列が崩れたといっても、再生機構の案件となるような古い組織体は概ね年功制だ。上部構造にいる人たちは、長い間ムラ社会の論理で行動しており、しがらみから逃れられない。

 まだ40歳ならば、あと20年はこの会社で飯を食おうと長い先のことを考えるが、残念ながら65歳の人に30年後のことをリアルに真剣に考えろといっても、それは無理だ。役員会で65歳の人が20人いたとして、彼等は結局、ハッピーエンドで残りの人生を平和に過ごしたいという思いのほうが強く出る。体を張って自分の命を消耗するような厳しい改革をやれというのは酷だし、そのようなインセンティブを持ちようがない。