給与天引きタイプはなぜうまくいかないのでしょうか?財形貯蓄、ミリオン、ファンドるいとう...企業が従業員向けに導入する貯蓄や投資商品で、成功したものは数少ない。なぜだろうか? Photo:PIXTA

「給与天引き」タイプは
なかなかうまくいかない

 2018年1月から「つみたてNISA」が始まってほぼ1年半、口座数はどうやら順調に伸びているようである。昨年末時点では、つみたてNISAの口座数は約104万口座、NISA全体の口座数1246万口座からみればまだ1割にも満たないが、通常のNISAは始まってすでに5年半にもなるし、口座開設したものの残高がゼロという口座も一定数あることを思えば、つみたてNISAは毎月必ず継続購入されているわけだし、健闘しているといってもいいのではないだろうか。

 個人が自助努力で将来に向けて資産形成をする制度としては、iDeCoと並んでNISAやつみたてNISAは有利であることは間違いない。筆者も今後、この口座が順調に増えていけばいいと願っている。

 しかしながら、NISAの活用方法の1つとして存在している「職場積立NISA」については、正直、悲観的な見方をしている。これは、筆者が他の評論家やブロガーの人たちとは少し意見が異なる部分なのだが、なぜそう考えるのかについて述べてみたい。誤解のないように申し添えておくが、筆者は「職場積立NISA」が良くないと言っているわけではない。できることなら、この制度を採用する企業が増え、職場を通じて加入する人が増えればいいと願ってはいるが、実際にはそれほど簡単ではないと考えるのだ。

 筆者は長年、証券会社の中で、職域における給与天引き等を活用した資産形成のビジネスに取り組んできた。一般の営業のように、個人投資家に対して投資信託の購入や株式の売買取引を勧誘するのではなく、企業に営業活動を行い、結果としてその企業に勤める従業員の人に、給与天引きを利用した貯蓄や投資に入ってもらうというビジネスだ。

 これはいわゆる「B to B to C」というパターンのビジネスである。職場積立NISAもそのうちの1つといっていいのだが、実はこうしたタイプのビジネスはかなり昔からあった。

 最も古くからあるのは「従業員持ち株会」で、これは1968年に始まった制度だから、すでに半世紀を経ている。そして1971年に始まった「財形貯蓄」、1988年の「ミリオン」、1996年の「ファンドるいとう(当時の名称)」などがある。

 給与天引きではないものの、職域の中で資産運用を自ら行う制度としては、2001年に法律が施行された「確定拠出年金」もその1つである。しかしながら、これらの制度のうちで、成功したといえるのは従業員持株会と確定拠出年金くらいだろう。他のものはいずれも、ほとんど広まらないままという結果に終わっている。