ギリシャの再選挙は、緊縮財政派の勝利という結果になった。同国のユーロ離脱という“最悪の事態”は回避された。しかし、市場の不安は全く収まっていない。ギリシャの火種は今後もくすぶり続け、さらにスペイン不安の沈静化と、イタリアへの波及阻止という、より大きな課題が欧州に突き付けられている。

ギリシャの新首相のNDのサマラス党首
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 ギリシャの政局混迷によって欧州は貴重な2ヵ月もの時間を空費してしまった。

 5月初旬の総選挙で、ギリシャでは欧州連合(EU)、国際通貨基金(IMF)による金融支援の条件撤回と反緊縮財政を掲げる、急進左派連合が躍進した。今回の再選挙で同党が勝利した場合、EUとIMFが支援を打ち切り、ギリシャがデフォルト(債務不履行)、最終的にはユーロ離脱という最悪の事態に至る可能性があった。そうなれば、これまでEU各国がギリシャに行ってきた融資は焦げ付き、ユーロという仕組み自体の信認が揺らいで、欧州経済は大混乱に陥っていただろう。

 もっとも、あくまで“最悪”を回避できただけであり、状況が改善したわけでは全くない。

 再選挙で勝利した新民主主義党(ND)は全ギリシャ社会主義運動(PASOK)などと連立政権を組み、第1党に与えられるボーナス50議席と合わせて過半数を獲得した。だがNDとPASOKの得票率は約4割にすぎず、国民に緊縮財政に対する強い不満がある状況には変わりない。

 ND自身も選挙公約として支援条件の緩和を掲げており、EU、IMFとギリギリまで駆け引きを繰り広げることになるのは必至だ。

 EUとIMFは財政再建目標の期限延長では譲歩するとみられているが、NDが掲げる減税などを認めるのは困難だろう。期限延長も簡単な話ではない。財政再建が遅れる分、必要な支援額が拡大するからだ。「現在のギリシャに対する第2次支援の枠組みそのものの練り直しが必要となる」(田中理・第一生命経済研究所主任エコノミスト)可能性もある。