多様性と個性が尊重される
暗号資産・ブロックチェーンの近未来

 暗号資産(と暗号資産の基礎技術であるブロックチェーン)に関する動きは、国や地域といった境界線、境界線の枠内で構築された固有の制度や仕組みを飛び越えて成り立つ可能性を秘めている。

 たとえば、東京電力が進めるブロックチェーンプロジェクトは、電力自由化の中で小口の電力融通と決済を結びつける興味深い取り組みだが、この仕組みは電力や電力に関する決済インフラが未整備なアフリカでも、活用されることが考えられる。

 日本郵船は、外航船舶で勤務する150万人に対する給与支払いや船内での小口決済のために、QRコード決済を活用したフィンテックサービスの導入を検討していると報じられた。外航船舶での勤務において、船員は国境を気にする合理性を持たない。外航船舶は暗号資産やブロックチェーンを活用する上で、打ってつけのプラットフォームと言える。

 トーマス・フリードマンが提唱した「フラット化する世界」観は、ナショナリズムや保護主義の台頭によって、多様な文化・価値観・制度の国々が共存する「マルチドメスティック化する世界」観と、せめぎ合いをしていると言われている。しかし、暗号資産の周辺で起きていることは、世界がフラット化するのか、それともバラバラなままなのか、といった二項対立的な議論を軽々と飛び越えるか、議論そのものを不問にする可能性を感じさせる。暗号資産が普及することで、世界は共通のプラットフォームのもと、多様性や個性が尊重される社会に近づくようにも思える。

 日本は、やや狂騒めいたブームが去ったお陰で、冷静に(もしくは引いた目線で)暗号資産の現在地を眺めることができるようになった。この分野でひと儲けしようとした関係者にとっては当てが外れた格好になったのかもしれないが、むしろ勝負はこれからが本番である。ビットコインなどの価格動向に目を奪われることなく、世界で起きている暗号資産関連の変化の胎動を、しっかりとフォローしていきたい。

(フィンテック・エンスージアスト/MBA講師 大前和徳)