米国雇用統計のヘッドラインは景気減速を懸念させるものだったが、現時点で過度の悲観は不要だと考える。依然として内需を中心に景気は底堅く、FRBによる本格的な利下げ局面を織り込むのも時期尚早だとみられる。
他方、米中貿易摩擦は激化しており、大統領選挙、経済状況と複雑に絡み合い、先行き不透明感が増している。
5月の米雇用統計で
景気の減速懸念が再燃
2019年5月の米国雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月から7.5万人増加した。雇用環境改善の目安とされる+15~20万人の増加ペースを大幅に下回り、再び雇用改善ペースに鈍化の懸念が生じる結果となった。
業種別に見ると、製造業は前月差+0.3万人と引き続き緩慢な増加に留まった。2018年の製造業は平均で毎月2万人程度雇用者数が増加していたが、2019年に入って以降は毎月平均で+0.6万人程度の増加ペースに鈍化している。
また、これまで雇用増加のけん引役であった民間サービス部門は、同+8.2万人と4月(同+17.0万人)から増加幅が大きく縮小、全体の伸びが鈍化した主因となった。内訳を見ると、小売や情報通信で減少が続くなか、教育や医療、専門サービスなどの減速により全体の伸びを押し下げた。
雇用者数の増加ペースに減速懸念が生じた2019年2月(前月差+2.0万人:速報値)以降、3月、4月で増加ペースが再び加速し、減速懸念が後退した直後だけに、5月の結果はサプライズであったと言えるだろう。
しかし、雇用統計の特徴や中身を子細に見れば、5月の結果だけを見て大きな懸念を抱く必要はないと考えられる。