離れて暮らすシニア世代とのコミュニケーションツールとして「IoT鳩時計」が、ひそかな注目を集めている。見た目はただの鳩時計、できることはスマートフォンから鳩を鳴らせるだけ。正直あまりパッとはしない。それなのにユーザーからは「一度使うと手放せない」と絶賛されている。いったいIoT鳩時計のどこに魅力があるのか。開発者の高橋浄久さんに話を聞いた。(清談社 村田孔明)
ただ鳩を鳴らすだけの
「IoT鳩時計」がなぜ人気?
IoT鳩時計は、スマートフォンの専用アプリから、インターネット経由で好きなときに鳩を鳴らせる仕組みだ。鳩が鳴っても返信も履歴確認もできない。鳩時計を鳴らせるメンバーは8人までしか登録できず、そのうえ誰が鳩時計を鳴らしたのかもわからない。
ところが、この鳩を鳴らすだけのIoT鳩時計の開発資金をクラウドファンティングで呼びかけたところ、目標額の100万円を初日で達成。総額で600万円以上の資金が集まったという。
なぜIoT鳩時計がこんなに多くの人の心をつかむのか。開発したOQTA(オクタ)の高橋浄久さんは、「承認欲求ではなく自己満足がOQTA HATO(IoT鳩時計)の真骨頂だ」と説明する。
「鳩の鳴き声を聞いても誰が押したかわからない。でも勝手に『あの人が押したのだろうな』と想像して自己満足する。鳴らす側も、聞いているかわからないけど『きっと届いているはず』と鳩を鳴らす。OQTA HATOは、つきつめていくと自己満足の世界なのかもしれません」
人とのつながりは感じたいけれど、承認欲求を満たすためのSNSには疲れたという人は多いはず。SNSでは、親しい人からコメントがなかったり、反対に苦手な人に“いいね!”を押されたりすると、深読みしてかえって落ち込んでしまうこともあるだろう。
「発売が数年早かったら、OQTA HATOの魅力は伝わらなかったかもしれない」と高橋さんは話す。今の時代だからこそ、言葉を使わずにつながりを感じられるOQTA HATOが脚光を浴びているのだ。