(1)連続的で大幅な利下げ局面(3ケース):
3回に2回はドルが当初下落せず

 本ケースは、米景気先行指数がピークを付けた後も利上げが続けられたが、米景気一致指数がピークを付ける前に利下げに転じ、5%ポイント以上の連続的で大幅な利下げが実施されたもので、上記①、④、⑤が該当する。⑤のケースでは、利下げ開始に先立ちドル円が下落基調に入り、利下げと共に続落した。一方、①と④のケースでは、利下げ開始後も米景気がピークを付けていない中でドル円は(むしろ)上昇し、景気後退期入り後にドルが下落した。いずれの場合でも、景気後退期に入ると米株安も同時に起きる傾向があり、米金利低下・米株安・ドル安となる。

 足元の市場では、⑤のケースを念頭に、米景気がいずれ後退期に入り、連続的で大幅な利下げが実施され、ドルが下落基調に入ると想定しているようにみられる。ただし①と④のケースのように、利下げが開始されても米景気が拡大期にあるうちはドルが下がらなかった、という事実にも留意する必要があるだろう。現在、米国の景気先行指数、一致指数は、ともにピークを付けていない(米国の景気拡大は続いている)ため、連続的で大幅な利下げが差し迫っているようには見えない。

(2)少数回の小幅利下げ局面(2ケース):
ドルは上昇

 2つめのケースは、米景気の拡大期が続き、米景気先行指数が必ずしもピークアウトを示さない中、小幅利下げが実施されたもので、上記②と③が該当する。②のケースでは、94年2月から95年2月の間に政策金利が3.00%から6.00%へ引き上げられたが、その後、最後の利上げから半年経たないうちに利下げとなり、政策金利は計3回引き下げられた。

 この利下げ期間中、ドル円は大幅に上昇した。ただ当時は、ドル円が1ドル=80円割れになるなど大幅に円高が進行し、米国が日本と協調してドル買い円売り介入を実施した局面である。米金融政策とは関係なくドル円相場が動いた面があった点は、割り引いて考える必要がある。とは言え、利下げの間に米国株の上昇が続き、ドルが下支えされた点は足元の局面にも通じるものがあると考えられる。

 なお③のケースは、ロシアが突然対外債務の90日支払い停止(モラトリアム)を発表し、米LTCMが破綻した(98年8月)直後 であり、円キャリー取引の巻き戻しから大幅に下落していたドル円が、米国の利下げで続落した局面でもある。当時実施された3回の利下げは、米景気を刺激する目的ではなく、金融危機拡散リスク抑制のための予防的措置と考えられ、足元との類似性は低いだろう。