ベーシックインカムまでいかないとしても

 もう一点、現行の制度を前提として公的年金の改善を図るなら、現在2分の1の負担となっている国民年金・基礎年金への財政の負担を全額に引き上げて、国民年金の保険料徴収をやめることを提案したい。

 本来なら「社会保障のベーシックインカム(最低限所得保障)への移行」というくらいの制度改正を提案したいのだが、さすがに変更が大きすぎて、実現性に難がある(不可能ではないはずだが、現実には難しそうだ)。しかし、「国民年金・基礎年金の全額財政負担」は、現行制度の延長で、直ちに実行できる。

 現役世代にとって、「世代的不利感」は年金制度に対する反感と不信の大きな源になっている。また、一律に徴収される国民年金の保険料は、特に若年かつ低所得な層にとって現実的に大きな負担だ。これが無くなることの、消費刺激の効果も大きいし、所得再分配の効果も大きい。

 年金に関する事務も大幅に簡素化されるし、国民が皆加入者になるので将来の無年金者がいなくなる。また、女性に専業主婦を奨励するかのような生活スタイルへの介入である、悪名高き(と言っておこう)「第3号被保険者」が意味をなさなくなるので、女性の仕事への参加にもプラス効果があるはずだ。

 財源は、インフレ目標が十分達成されるまでの期間は国債発行が適切であり、同時に金融緩和効果の拡大につながるだろう。インフレ目標達成後の長期的な財源としては、支給開始年齢の引き上げによる給付総額の削減と増税との間でバランスを取るといい。

 全体的な傾向として高齢者は元気で資産を持っているのだから、年金制度の改正を通じて、現役世代、特に若くて低所得な層に支援を行うことを考えていいのではないか。「世代間の支え合い」は若者が高齢者を一方的に支えるだけのものではない。

 もちろん野党が提案してもいいのだが、与党から呼びかけるのでもいい。超党派で合意して実現するならなおいいだろう。

(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)