緊急を要しない手術は
入院期間の交渉を

 同じ医療を受けても、入院期間が2ヵ月にまたがったB子さんは、歴月範囲内で収まったA子さんに比べると、自己負担額が7万7430円も多くなってしまった。

 健康保険は、保険料や税金などで運営されている国民の共有財産だ。決められたルールに沿って運用しないと、制度が立ちゆかなくなってしまうので、高額療養費が歴月単位で計算されるのは仕方のないことではある。だが、同じ治療を受けたのに、入院期間が月をまたぐか、またがないかによって医療費に差が出るのは、個人としては納得しがたい気持ちになるのも当然だ。

 とくに、これまで医療費が低く抑えられていた70歳以上の高齢者も、2018年8月から、年収約770万円以上の高所得層については、高額療養費の自己負担上限額が引き上げられており、治療期間が月をまたぐと、さらに負担が増える。

 70歳以上の人の高額療養費の見直しは、「負担するのは現役世代、給付を受けるのは高齢者」という従来型の社会保障の構造から、年齢に関係なく「能力に応じて負担し、必要に応じて給付を受ける」全世代型の社会保障制度に転換するための改革の一環として行われたものだ。そのため、これまで所得に関係なく一律に優遇されていた高齢者も、一定以上の所得がある人には相応の負担を求められるようになっている。

 社会保障制度を持続可能なものにするためには必要な改革ではあるが、病気になったときの負担が増えるのは、うれしいものではないはずだ。

 もちろん、交通事故によるケガ、脳血管疾患など、今すぐ治療しないと命に関わるというものは、入院期間を選ぶことはできない。だが、人工関節の手術のように緊急を要するものではなく、計画的に行う治療については、入院期間が歴月範囲内に収まるスケジュールを組んでもらえないかどうか主治医に相談してみるのも、医療費を節約するための1つの手段だ。

 直接、主治医に話すのは気が引けるという人は、各病院に設けられている「医療相談室」などに相談してもいい。ベッドの空き状況、執刀医のスケジュールもあるので、必ずしも患者の希望が通るわけではないが、相談すれば配慮してもらえることもある。

 高齢になると、病気やケガの治療のために入院する確率も高くなり、医療費の負担も増える。だが、その時、高額療養費の仕組みを知っていれば、ちょっとしてことで数万円単位で医療費を節約できる可能性もある。

「入院は、その月の1日から末日までに終えられるのがお得」だということを覚えておこう。

(フリーライター 早川幸子)