修復で漫画のようになってしまったスペイン聖像は「現代アート」かスペインのサンミゲル教会にある聖ホルヘ像の修復前(左)、1度目の修復後(中央)、再修復後(右)の写真。1度目の修復では、漫画かアニメキャラのような「別物」に仕上がってしまった Photo:AFP=JIJI

漫画風に修復されてしまった
残念すぎるスペイン聖像

 最近、サブカル好きの筆者にとって興味深いニュースを見つけました。スペインのナバラ州にあるサンミゲル教会に置かれていた聖ホルヘの木像が、再修復によって以前と同じ姿へと原状回復されたそうです。

 どこが問題なのかというと、一度目の修復を地元の工房に発注したところ、まるで漫画かアニメキャラのような「別物」の作品に仕上がってしまったというのです。それで地元住民が怒り出して問題となり、発注した教会と修復した工房、それぞれが約70万円の罰金処分を受けることになりました。そして教会が改めて約370万円の修復費を出し、州都にある公認の専門修復施設で再修復をして、元通りに戻したというわけです。

 日本のニュースでは「素人の修復で漫画風にされた」と報道されましたが、実際はこの問題、もう少し根が深そうです。

 スペインでは2012年、サブカル界隈では名高い「エッケ・ホモ事件」というものが起きています。こちらはまさに「歴史的絵画が素人の修復でめちゃくちゃになった」事件です。簡単に言えば、「エッケ・ホモ」(あの人を見よ)という新約聖書で有名な題材をもとに描かれたガルシア・マルティネスのフレスコ画を、素人のおばあちゃんが善意で修復したら、サルのような顔になってしまったという事件です。

 そういったことが過去、起きている国なので、今回も同じような事件なのかと思ったら、どうもそうではない。作業を担当したのは素人ではなく、地元の工房です。それで出来上がった一度目の修復は、全体のカラーリングを全く違うトーンにした現代アート風の作品だったのです。

 元の彫刻は、薄い栗毛色の馬に乗った騎士が褐色のドラゴンを倒している木像でした。ところが修復したデザイナーは、日本のアニメ風に、馬は神秘的な青色、馬具や鎧の装飾は真紅の革であしらい、ドラゴンの体色は黄緑をベースに改作しています。とどめは騎士の表情で、オリジナルとは大きく異なるアニメ顔に仕上がっているのです。