スマホを見ていて、そのまま寝落ち…で
「歩行障害」が出た例も!

 さてもう1つ、怖い症例をご紹介しましょう。

 38歳男性のBさんは、右の肩甲骨の痛みと腕の痛み、また首の神経に沿ってしびれを感じていました。

 しかし、それだけでなく、両脚にしびれがあり、歩きにくい、つまずくといった歩行障害も認められたのです。

 よく聞くと、座ってスマホをしながら寝てしまい、起きたらこのような症状を自覚したとのこと。Bさんは「頚椎症性せきずい症」と診断されました。

 この病気はかなり深刻で、脳とつながっている首のせきずいが、骨や椎間板によって圧迫されて起こります。

 ボタンのはめ外し、お箸の使用、字を書くことなどが難しくなったり、歩行で足がもつれるような感じや、階段が登れなくなったりして、日常生活が不自由になります。

 怖いのは、それが原因で転倒し、せきずいが損傷を受け、両手両足が麻痺する可能性があることです。

 せきずいが損傷を受けると、運動と共に感覚も麻痺してしまいます。首のせきずい損傷では、意識ははっきりしているのに両手両足が全く動かず、感覚もない状態になってしまうこともあるのです。

 Bさんの症例は、スマホをしながら寝てしまって首が引き伸ばされ、麻痺の一歩手前までいってしまったという危険なケースです。

診断後、せきずい外科へと移り、絶対安静の入院となりました。幸いなことに、3日間のステロイド投与で改善し、手術は行わずにすみました。

痛みが引かない場合には
整形外科か「ペインクリニック」へ

 さて、今回のお悩み相談ですが、肩が上がらない、痛いときには五十肩だと考える人が多いと思います。この五十肩とは「肩関節周囲炎」のこと。肩の関節周りの組織に炎症が起きることで、この例に出したAさんの頚椎椎間板ヘルニアや、Bさんの頚椎症性せきずい症とは違う病気です。

 患者さんの自己診断と、日々同じような症状の患者さんを多く診ている医師の診断は一致しないケースが多くあります。また、肩から手にかけての痛みなのに、原因は首にあったという事例は日常的に多くみられます。

 痛みが強い方や、徐々に進行してきている方、3ヵ月以上経っても治らない方などは、「最近仕事が忙しいから…」「(病院へ行くのは)ストレスが多いから…」などと言わず、病院できちんとした診察を受けることをおすすめします。そして、その場合は整形外科やペインクリニックを受診してみてください。

 ペインクリニックは、痛みを専門とした診療科です。

 通常の内科や整形外科と同様に保険診療です。成人の方で3割負担の保険を用いた場合、行う検査や処置にもよりますが、5000円程度だと思います(初診料、薬代含む)。

 ペインクリニックがどこにあるかわからないという方は、ペインクリニック学会ホームページに病院の紹介がありますので、是非ご覧ください。

小林玲音

小林玲音
昭和大学病院 麻酔科 助教

東京都出身。2005年に昭和大学医学部を卒業し、2007年より同大学麻酔科学講座に在籍。また、2011年同大学大学院(博士課程)にて学位取得。手術室での麻酔管理の他、ペインクリニックにも従事し、痛みに対する神経ブロック療法、できるだけ体に傷を残さずに治療するインターベンショナル治療の研究に携わっている。