研修をきっかけに「残業削減」に成功

急成長ベンチャーが、「プレゼン思考」を重視する理由Supershipホールディングス(株)人材開発本部長・吉田毅さん。

 研修の効果も上がっているようだ。
 昨年のテーマは、ずばり「どうしたら残業を減らすことができるか」。
 吉田さんいわく、昨年の受講対象部署のなかには「業務への高いコミットメントがある反面、残業が他部署より多い部署もあった」という。

 ところが、研修実施後、その部署の残業時間が社内最速のスピードで減り始めたという。「もちろん、研修による成果であったと言い切れるわけではありませんが、よい影響をもたらしたのは間違いないと思っています。通常、人事や経営側がいくら“残業削減”を訴えても、現場からするとジブンゴト化しずらく、なかなか実行には移りません。ですが、彼らは、研修を通して、残業問題という現実を自分たちのリアルな課題としてとらえ、一人一人が真剣にその解決策を考えました。そこに自発性が生まれたからこそ、結果が現れたのではないかと思います」

 では、彼らは、残業削減に向けて、どのようなプレゼンをしたのだろうか?
 5日間の研修を受けてからプレゼン大会までは少し間があり、その間に各チームはさまざまな情報を集め、「自分たちの何が課題なのか?」「競合他社の現状はどうか?」「どうすれば、競争力を維持・向上しながら残業削減ができるか?」「その解決策を実行したら、どのような効果が期待できるか?」などについて、ディスカッションを重ねながら検討を深めていった。

 これらの検討事項は、『社内プレゼンの資料作成術』『プレゼン資料のデザイン図鑑』の著者であり、Supershipグループのプレゼン研修講師を務める前田鎌利氏が提唱する、プレゼンのロジック展開「課題→原因(課題が生まれる原因)→解決策→効果」におおむね沿ったものだ。

急成長ベンチャーが、「プレゼン思考」を重視する理由

 前田氏は、このプレゼン・ロジックに沿って、情報収集・分析をして、思考を深め、具体的なアクションにつなげること――すなわち「プレゼン思考」の実践――に大きな意味があると話す。

急成長ベンチャーが、「プレゼン思考」を重視する理由前田鎌利さん

「まず重要なのは、残業時間が多いという課題の原因を特定することです。メンバーのスキルが足りないから効率性が上がらないのかもしれないし、不要な業務をやっているからかもしれません。その原因を特定しなければ、適切な解決策を導くことができません。そして、その解決策を実行したときの効果を予測することで、そのアクションを実行すべきかどうかを判断できますし、そこから適切な目標設定をすることもできます。この4つの要素をしっかりと考え抜くことで、プレゼンに説得力が生まれ、実行力が確実に上がるんです」

 実際、長時間残業に悩んでいた件の部署のメンバーは、プレゼン準備のなかで長時間残業の原因を追求。いくつもの原因がピックアップされたなかで、着目したのが「無駄な業務」だった。「無駄な会議」「資料の印刷」など不要な業務をカットすることで、労働時間を短縮できると考えたわけだ。

 そして、部署内のいくつかのチームごとに、「みんなで1日マイナス30分」施策コンペを行い、「なくせるもの・短くできるもの」を洗い出して、できるものからどんどん実行していくことを決定した。その内容を簡潔なプレゼン資料にまとめて発表。優秀チームに選ばれたのだ。