これらの主張の多くは、ケインズ理論などが前提とする財政の考え方と大きくは違わないが、財政赤字や政府の役割をより積極的に肯定しているのが特徴だ。財政の均衡は中長期的にも考慮する必要ないという考え。ただケルトン教授は講演で、MMTが財政赤字を無制限に続けることを肯定しているわけでなく、財政赤字はインフレ率によって調整する考えを強調した。

 インフレや景気は税や国債の増減で調整できるし、雇用も政府の「雇用保障プログラム」を通じて調整されるとする。

 不況期には、財政支出を増やして政府が働く意欲のある人を最低賃金で雇って支えるが、好況になれば失業が減り、賃金の高い民間に雇用が移動するので、財政支出は減るというわけだ。

政府主導で資金供給
中央銀行は「財政従属」

 MMTの場合、中央銀行や金融政策の関係についても、ケインズ政策などとは異なる考え方だ。

 多くの国では、政府と中央銀行はバランスシート上は一体でみることはできても、実際の運営はそれぞれ独立し、政府は財政均衡を、中央銀行は金利操作などで物価安定を図るという制度的な枠組みになっている。

 現在、日銀などが行っている国債購入もデフレ脱却が目的という建前だ。

 これに対してMMTは、「政府が中央銀行が金利をどうするかということに介入することはない」(ケルトン教授)としているものの、政府と中央銀行は文字通り一体と考え、中央銀行は財政赤字のファイナンスを受動的に行う財政に従属する存在だ。

 銀行による信用創造には、どちらかというと否定的で、政府が財政支出を通じて信用を創造し、市中に貨幣を供給するのが安定的だと考える。「需要を増やしたり所得を増やしたりする効果も、財政のほうが金融政策よりも、直接的にできる」(ケルトン教授)とする。

 もともとMMTの源流は、1940年代のアバ・ラーナーの「機能的財政論」といわれ、政府は不況時には政府貨幣を印刷し、景気過熱時には徴税によって紙幣の退蔵や余剰を解消することで、経済を望ましい状態に維持する役割があり、財政政策がそれを担うというものだ。

 日本のMMT支持派は、こうした考えをそのまま受け入れ実践することを主張するよりは、ケインズ政策の流れをくむ形で積極財政を主張している人が大半だ。

 実際、MMTを持ち出すまでもなくできる政策も多い。

インフレを止められるのか
「現実逃避の奇策」の批判

 それでも財政均衡主義に立つ“主流派”の経済学者や、MMTの矢面に立つ財務省からは当然のように批判や反発が起きている。