新進と形容されることも多い京アニだが、その歴史は実は1981年まで辿れる老舗である。しかし2000年代初頭までは、元請けスタジオから制作の一部を再受注する下請けの仕事が多かった。それが『AIR』といったコアファン向け作品の元請けを経て、やがて2006年に大躍進する。代表作『涼宮ハルヒの憂鬱』を発表したのだ。ライトノベル作家・谷川流氏のSF学園ものを原作とした同作は、深夜帯かつ地上波独立局で放送という静かなスタートだった。ところが凝った設定と丁寧な作画が瞬く間にアニメファンの心を掴み、一大ブームを築いていく。

 なかでもエンディングのキャラクターたちによるダンスシーンが出色で、ニコニコ動画などにファンが真似て踊ってみせる動画が多数投稿され盛り上がった。当時勃興してきたインターネットのファンコミュニティと連動し、公式サイトなどを通じてファンに謎解きを挑むといった仕掛けの効果もあった。現在では一般的になった、SNSを通してアニメとファンの密接な繋がりを作る事例としては先駆といえる。

 高いクオリティと表現されることの多い京アニの映像は、視覚面では作画と呼ばれるアニメーターの絵を描く工程に支えられている。アニメは少しずつ異なる静止画を連続させることで、動いているように見せている。リアルに自然に動かすには、膨大な枚数の静止画すべてに細かく手を入れなくてはならない。これが作画工程であり、アニメーターの手間と根気、そしてセンスが求められる。

 京アニは『ハルヒ』以降も『けいおん!』『Free!』『響け!ユーフォニアム』といった、青春もの・学園もののヒット作を連発。これらがファンを魅了した要因は、日常的なストーリーの中での細やかな表情や動作を、高い作画技術で実現してみせたからだ。もちろんアニメの魅力は作画だけではないが、これが京アニの大きな特長のひとつであったことは間違いないだろう。

正社員採用、社宅もあり
人づくりは作品づくり

 なぜ京アニは、こんなに高いクオリティを維持できるのか。そのひとつにアニメーターの人材育成に積極的に投資してきたことがあるのでないか。その最たる例が、業界でも早くからアニメーターを正社員などとして安定的に雇用してきたことだ。

 アニメ業界は、非正規社員で働く人がおよそ8割を占める。全産業平均では4割程度だから、アニメ業界の非正規率は非常に高い。もちろんフリーランスなどの形で柔軟に働きたい人もいる。しかし安定してスキルとキャリアを向上させたい人、とりわけエントリークラスのアニメーターにとっては、なかなか厳しい現実だ。若い駆け出しアニメーターは、雇用が不安定で収入が低く、労働時間も長い下積みが続く。