致死率が高い伝染病として恐れられているエボラ出血熱が猛威をふるうアフリカの地・コンゴ民主共和国から、エボラをはじめ感染症対策の現状や最新事情について、国立国際医療研究センター国際医療協力局から「コンゴ民主共和国保健省次官付顧問・JICA専門家」として現地に派遣されている日本人医師、仲佐保がレポートする。今回は第4回。世界保健機関(WHO)は7月18日、コンゴのエボラ流行が国外にも広がる可能性があるとして、緊急事態宣言をしたが、そのコンゴではエボラ以外に恐れられているもう1つの感染症がある。
「エボラ」以上に怖い
寄生虫病
北キブ州の「エボラ」は、収まる気配を見せずに、流行する保健ゾーンも増えている。6月中旬には、隣国のウガンダでの症例も出ており、今後の他国への流行の拡大が懸念されている。相変わらず続いているゲリラ等による「治安の悪さ」と、地域住民の「政府や国連機関への不信」が原因である。7月14日に、北キブ州の州都のゴマ市での最初の死亡例が確認された。
7月17日には、WHOにて緊急委員会が開催され、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」が宣言された。ゴマ市は、隣の国のルワンダとも近接し、また、首都キンシャサへの航空便も週4回就航していることから、さらなる拡大のリスクが高まっている。
今は、「エボラ」という急性の感染症の流行に苦しんでいるが、それとは別にここコンゴには、「睡眠病 Sleeping Sickness」という病気があり、今でも毎年、1万人近くの人がこの病気に感染し、犠牲になっている。かつては中央アフリカの多くの地域に広がっていたが、現在は、ほとんどの患者がこのコンゴ民主共和国で報告されている。
2019年5月に入り、久しぶりにコンゴ民主共和国の西に位置するコンゴセントラル州の首都・マタディを訪れた。コンゴ川の下流に位置している流通の中心地であり、ここにはアフリカ第2の長さのコンゴ川に唯一架かっているマタディ橋がある。
マタディ橋は、1983年、モブツ政権時代に日本の無償資金協力で建設された。太平洋からの多くの輸入品は、ここを通過して首都キンシャサに運ばれる。マタディ橋は日本のゼネコンが建設したが、これまでにはない大型の吊り橋ということで、ここでの経験が日本の本四架橋(3ルート)の建設に活用されたというエピソードがある。