致死率が高い伝染病として恐れられているエボラ出血熱が猛威をふるうアフリカの地、コンゴ民主共和国からエボラをはじめ感染症対策の現状や最新事情について、国立国際医療研究センター国際医療協力局から現地に「JICAコンゴ民主共和国保健省次官付顧問」として派遣されている日本人医師、仲佐保がリポートする。今回は第3回。政治と現地の治安の悪さに大きく揺れる現地の状況を伝える。
エボラ対策か大統領選挙か
「流行」が続いている地域では
2019年2月8日(金)、久しぶりにコンゴ民主共和国・首都キンシャサの内閣官房において、エボラの流行を含む、感染症流行の状況に関する会議に出席した。昨年12月30日に行われた大統領選挙の混乱のため、退避帰国していた各国の専門家や国連機関の職員も久しぶりに集まり、なかなか収まらないエボラについて議論した。
これまでのように、保健大臣を議長として始まり、感染症流行の状況が報告されたが、この感染症流行に関する会議でもエボラに関しては最後の10分ほど割いただけで、他の感染症であるはしか、コレラ、黄熱病が主な話題だった。
いつもは歯切れ良く、議論のイニシアチブを取るイロンガ保健大臣も何となく元気がなく、エボラに関する質問に対しても、静かに答えるだけだった。昨年から継続している「エボラとの戦い」の疲れかもしれない。現場ではこれまでと同じように新しいエボラ感染者、死亡者が出ていることの緊張感は伝わってこない。
2月8日現在、北キブ州でのエボラ出血熱の患者数は801例、死亡者数も454例と報告された。感染者が報告された保健地域も18に増加しているにもかかわらず、その話はほとんど出てこない。
私は、2018年3月から、国立国際医療研究センター国際医療協力局から派遣されて、JICA(国際協力機構)のコンゴ民主共和国保健省次官付顧問として首都のキンシャサに来ており、大統領選挙の混乱を避けるために、日本に一時帰国していたところである。