現代貨幣理論(MMT)派のステファニー・ケルトン・米ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校教授が7月3週目に来日した。それを受けて、日本のマスメディアは彼女の講演等を大きく取り上げた。
MMTは「政府は財政赤字を気にすることなく歳出を拡大し続けることができる。ただしインフレ率が高まるまでは」という理論だが、不自然な報じ方も見受けられた。例えば、同理論は世界中で注目を集めている、と紹介する記事が散見されたが実際はそうではないといえる。
先日米国に出張した際、MMTへの関心は既に下火で、マスメディアにも取り上げられなくなっていると感じた。6月最終週に行われた、米民主党の大統領選挙候補者による討論会では、MMTを政策に採用すべきだと主張した候補者は一人もいなかった。
米国では「MMTはうさんくさい」という印象が定着してしまっており、選挙を重視するならばそれに触れない方が得策というムードになっている。ジェローム・パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が今月出席した下院と上院における公聴会でも、MMTを話題にした議員はいなかった。