本書の要点

(1)行き過ぎた承認欲求は、夫婦の関係を歪ませる。
(2)家族への愛情をうまく伝えられず、家庭での居場所をなくす男性は多い。一方、女性は、家事に育児にと努力しても夫に認められないと嘆くケースが多い。夫、妻ともに自分の思いを伝え、相互理解に努める必要がある。
(3)夫婦幻想から抜け出すには、理想を追求し過ぎず、お互いに思いやりを持つこと、世間の眼差しや社会的評価を過剰に意識しないことが効果的だ。

要約本文

◆事例(1)妻も夫も両立の壁
◇「ワーク・ライフ・バランス」目指す夫婦

 夫婦が協力し合い、仕事と家庭の両立を実現しようとするなかで、さまざまな困難に直面することがある。そのうちに、夫婦が互いに悩みを打ち明けられないまま、心を閉ざしてしまうケースも少なくない。

 取材開始当時、剛さんとまゆみさんは仲睦まじい新婚夫婦で、剛さんは24歳、まゆみさんはその4歳年上だった。剛さんは、ワーク・ライフ・バランスへの会社の理解が不十分であることに不満を抱き、自主的に情報収集をするほか、上司や先輩に異議を申し立ててもいた。まゆみさんは、妊娠したら育休を取りたいと考えていたが、復帰後は以前と同じような仕事には戻れないのではないかと懸念していた。まゆみさんの会社には、育児休業(以下、育休)制度はあるが、子育てをしながら働いている女性はほとんどいなかったからだ。

◇両立に苦しむ妻

 まゆみさんはその後、31歳で出産。育休を取得後、職場に復帰した。復帰後しばらく経ったころ、著者は育児と仕事の両立についてのインタビューを行った。

 著者が育休前と職場復帰後の仕事の違いを質問すると、まゆみさんは頬を引きつらせてしばらく黙った後、「わたしは、何かの、役に、立っているん、でしょうか……」と、消え入るような声で話し始めた。