なぜインスリンの飲み薬はないのか?
その理由を知ればコラーゲンにダマされない
たとえば、こういうことです。冒頭でも紹介した今、人気を博しているサプリメントのコラーゲン。大事なことなので繰り返しますが、あれを口から摂取することで、「肌がプルプルに若返る」というのは感覚です。
一方で、あれを口から摂取してみたところで、「肌に効くはずがない」というのが生化学が立証するところです。
なぜなら、コラーゲンは、消化・吸収の過程でただのアミノ酸に姿を変えてしまい、そのまま肌に届くなどあり得ないからです。また、肌に塗っても中に吸収されず、もし分子量を小さくして吸収されても、肌のコラーゲンとして使われるということはありません。
これは、飲み薬のインスリンが存在しないことを見ればよくわかります。「注射ではなく飲み薬のインスリンが欲しい」という糖尿病の患者さんは多いのですが、そんなものはつくれません。インスリンもタンパク質の一種です。口から飲んだことによって、そのインスリンは消化・吸収のレールに乗って、ただのアミノ酸に変わってしまい、もはやインスリンではなくなるからです。
「私たちを太らせるのは脂肪ではなく炭水化物だ」というのも、生化学を知っていれば簡単に理解できることです。ただ、多くの人が感覚で「脂肪を摂ると太る」と思い込んでいるのです。
生化学を理解している人間だけが
アドバイスできる「医学的に正しい食べ方」
『医者が教える食事術2 実践バイブル』では、生化学に基づいた分析も随所に入れていきます。その上で、最新の信頼おけるデータと私の臨床経験を踏まえ、今、考えられる「最強の食事術」を紹介します。
私は生化学が大好きですが、たいていの医者は不得意としているはずです。というのも、亀の甲のような化学構造や体内で起きている化学反応を地道に学ぶ生化学は、実際の患者さんを診る臨床医にとって「関係ない」世界なのです。大学での講義も退屈ですから、医学部1年目にさらっと習ってすっかり忘れてしまう人がほとんどです。
それどころか、ハーバードはじめ欧米の医学部(メディカルスクール)では講義すらしません。そんな時間があったら、病院の現場で臨床経験を積むことを優先しているのです。
たしかに、医者にとって臨床経験は非常に大切です。私自身、専門医として多くの患者さんを治療することで成長してきました。一方で、生化学をきちんと理解していない人が、食事について何か言えるはずはないのです。医学的に正しい食べ方について正しくアドバイスできるのは、生化学を理解している人間だけです。