人生100年時代には公的年金以外に「2000万円」が必要との情報を金融庁が発信し、新聞やTV、そして国会でも大きく取り上げられました。この金額の根拠は、直近の家計調査で、高齢夫婦無職世帯の実収入が月額20万9198円に対し、支出が26万3717円(含む直接税、社会保険料)で、その差額が5万4519円となっており、その30年分ということで1963万円≒2000万円と計算しているようです。私が見た朝の情報番組では、「20歳から社会保険料を払い続けても、なお2000万円も必要なのか」というネガティブな意見が多かったように思います。でも個人的には現実はもっと厳しく、2000万円以上必要なのではないかと思っています。今回はその理由について見ていくことにします。
理由(1):今の高齢者の多くは持ち家があるけど…
まず、今の高齢者の多くは持ち家があるため、当該家計調査では住居にかかる費用が1万3656円とかなり低くなっています。全国で見ると持ち家比率は61.6%(平成25年住宅・土地統計調査)ですが、東京で持ち家比率は45.8%(同上)と全国平均よりも低く、東京で暮らす人が増えているため、今後、持ち家を有する比率はどんどん下がっていくと思われます。東京などの都市部で賃貸暮らしの場合、家賃が1万3656円というのはありえない水準ですよね。したがって、賃貸の場合には住居費がもっと上がることが想定されます。全国賃貸管理ビジネス協会によると3部屋間取りの家屋の家賃は月6万5851円(全国平均、2019年4月)ですので、今のデータよりも5万2195円支出が増えてしまいます。当然、不足額もその分だけ増え約10万円になります。