嫌な相手にも笑顔を作る
「表層演技」は不健康になりやすい

 感情労働では、労働者がまるで舞台で劇を演じる役者のように感情表現を作り上げていますが、それには「表層演技」や「深層演技」などと呼ばれる表現のパターンがあることが研究でわかってきました。特に内側の感情と外側に表出する感情が一致しない、つまり嫌な相手でも本心を隠して意識的に笑顔を作り出すような「表層演技」を行うことで、不健康な状態に陥りやすいこともわかっています。

 もちろん、感情労働による心身の消耗が極力ない職場環境の整備が大切なのは言うまでもありません。しかし、なかなかそうした職場環境は作られにくいのが実情ですから、働く人が個人としてできる対策を身に付けることが大切でしょう。

燃え尽き症候群になりにくい考え方

 自分の感情、およびそれと密接に結びついている思考などとの向き合い方について、近年注目されている方法の1つに、「心理的柔軟性」という概念があります。心理的柔軟性とは、“勝手に湧き上がる自分の感情や思考にとらわれることなく、自分自身が大切にしたい考えをより採用し、いきいきとした生活を送るための行動的側面”のことをいいます。

 最近の研究によると、心理的に柔軟な従業員は、燃え尽き症候群の一症状である「情緒的消耗」、すなわち心身のエネルギーを消耗し、感情をすり減らすような経験が少ないことに加え、本来は仕事のつらさにより情緒的消耗が強まるところ、それがやわらぐことがわかっています。

 一方で、表層演技を行うことの多い従業員は、仕事のつらさによって情緒的消耗が進んでしまうことも明らかになりました()。この研究結果から、心理的柔軟性が優れた人は、たとえ職場環境がよくなくても燃え尽き症候群になりにくい思考パターンを持っている可能性があるといえます。

 それでは、燃え尽き症候群にならないために、自分の感情や思考とどのように付き合うのが健康的といえるのか、イラストで例を挙げて紹介します。

※引用:
1)Biron, M., & Van Veldhoven, M. (2012). Emotional labour in service work: Psychological flexibility and emotion regulation. Human Relations, 65(10), 1259-1282.