8/11放映の第5話で20分にわたるリアルな試合シーンが「思わず声を上げて応援してた」「ラグビーの試合を観てみたくなった」とSNSで大いに盛り上がった日曜よる9時からのTBSドラマ『ノーサイド・ゲーム』。その楽しみは、輝かしい実績を持つ元ラグビー選手たちの姿を画面の中に見つけることにもある。
ラグビー界きってのイケメン選手として人気を集めた天野義久さんもそのひとり。現役引退後は経営者、そして俳優に転身し、話題作への出演が相次いでいる第5話で見せた渾身のタックルには思わず息をのんだ視聴者も多かったのではないだろうか。そこで今回はアストロズの精神的支柱で最年長メンバー、ナンバーエイトの本波寛人を演じている天野さんにドラマにかける思いを語ってもらった。

――天野さんはアストロズのベテラン選手、本波寛人を演じています。

 今は46歳、最初は正直、本波寛人という選手役は厳しいかな、とも思いました。でもこの歳で現役選手に戻れるチャンスを前向きに受け取り、ラグビー界への恩返しの気持ちも含めてチャレンジする事に決めました。

天野義久(あまの・よしひさ)
1972年生まれ。明治大学卒業後、サントリーに在籍。2010年にNHK大河ドラマ「龍馬伝」で俳優デビュー。映画「セカンドバージン」やTBSドラマ「天皇の料理番」「陸王」、NHK大河ドラマ「西郷どん」などに出演。

――天野さんは海外でのプレー経験など、それまでの一般的なラグビー選手とは違う道を切り開いてきました。

 本来、ラグビーをする事と仕事を選ぶ事は別だと考えていました。ラグビーチームを持っている企業はどこも素晴らしい企業だと思います。ただ僕の場合は就職イコール、ラグビーチームに在籍するという選択以外のものを考えたかった。今でこそ複業という考え方がありますが、当時からそのような選択肢を求めていた気がします。大学を卒業した時に一度、大手ゼネコンに就職したんです。チームの監督に熱心に誘われ心が動きました。でもバブルがはじけてラグビー部の予算が取れなくなり、強化として採用するはずだった有望選手の話が流れたりした。結果半年ほどでその会社を辞める決断をしました。日本代表にも選ばれたのですが、もっと視野を広く世界の強豪国がどのように取り組んでいるかを知りたかったので海外に出ました。ご縁を頂きオーストラリアとイングランドでプレーができた事はとても大きな財産になりました。

 帰国後もラグビーのあるべき姿を自分なりに考えて、より良い環境になるようにと自分の意見をまっすぐに所属した会社にぶつけていました。振り返ると『ノーサイド・ゲーム』と重なる経験がたくさんありました。だからラグビー経験のない大泉洋さん演じる君島GMが経営戦略の目線でどのようにアストロズを変えていくかすごく興味深いんです。

――ラグビーの花形選手として活躍し、俳優に転身された天野さんですが今回のような撮影現場は珍しいのでは?

 ラグビーの合宿なのか、撮影なのか、よく分からない感じです(笑)。演技初体験の人が多くて、みんな撮影のルールを知らないから静かにしなきゃいけないときに静かにできない。監督が話している時にガヤガヤしたり(笑)。撮影のルールが分からない人が圧倒的に多い現場なんてもうないでしょうね。でもジャイさん(福澤克雄監督)が言うんです。普通のドラマは役者にラグビーを教える。今回はラグビー経験者に役者をやらせる。画面に映る迫力が違う。ハリウッドでは本物に演技させる事が時流になっている、と。

――初めて俳優の仕事をしたのは、NHK大河ドラマ『龍馬伝』でした。

 最初のセリフはいまも忘れられません。福山雅治さん演じる坂本龍馬に、「坂本龍馬じゃな」と言うものでした。何も知らない世界に飛び込んで、カツラをかぶってセリフを言う。どのタイミングで話していいか分からない。怖かった。最初は本当に緊張しました。だから今回のアストロズのみんなもすごく頑張っていると思います。

――ラグビー選手たちはどうやって演技を学んでいるのでしょうか。

 最初の台本読みの回数も普通ではないくらい多くやっていたようです。ジャイさんの演出は直球、そしてとても繊細。(ラグビー日本代表前ヘッドコーチの)エディー・ジョーンズみたいな人です。状況を整えて後はハートを届ければいいようにしてくれる。みんなやりやすいんじゃないかな。「演技をしろ」ではなく、心からの言葉が出れば表情にもそれが出ると指導してくれています。