ゾロアスター教には、
善い神のグループと悪い神のグループが存在する

――ゾロアスター教とは、どのような宗教なのですか?

出口:ペルシャの地に移住したアーリア人の民族的な信仰を基本にしています。ザラスシュトラの没後、およそ千数百年後の3世紀に入って、ゾロアスター教の教典が編纂・整備されました。経典の名前は『アヴェスター』です。ザラスシュトラの言葉と彼の死後につけ加えられた部分によって構成され、全部で21巻あったといわれています。現在はその約4分の1が残存しています。

ゾロアスター教の最高神はアフラ・マズダーです。彼が世界を創造したのですが、世界には、善い神のグループと悪い神のグループが存在します。そしていつも争っていると、ゾロアスター教は教えます。

――ゾロアスター教には、善い神だけでなく、悪い神も存在するのですか?

出口:そうなんです。善い神のグループは、人類の守護神であるスプンタ・マンユを筆頭にして七神。悪い神のグループは、すべての邪悪をつかさどる大魔王アンラ・マンユ(別名アフリマン)を筆頭にして、こちらも七神です。

ゾロアスター教では宇宙の始まりから終わりまでを1万2000年と数えます。それを3000年ずつ4期に分けました。そしてザラスシュトラは、「今の時代は善い七神と悪い七神が激しく争っている時代なのだ」と説いています。
苦しい日々が続くのは、悪い神の親分アンラ・マンユが優勢なとき、楽しい日々が続くのは、善い神の統領スプンタ・マンユが勝利を続けているときなのだと教えたのです。

仮にこの世を、一人の正義の神がつくったとすると、正義が世界中にあふれていることになります。悪い君主も殺人鬼も存在しない理屈になります。清く正しく生きていれば、誰もが幸福になれるはずです。それなのになぜ、人生には苦しみがあるのか。神がいるのなら救ってくれてもいいじゃないか。そう考えて悩むことになります。
けれども、善と悪が存在する「善悪二元論」であれば、現世で生きる苦しみと来世との関係をわかりやすく説明できます。

ゾロアスター教には、偶像崇拝はなく、火を信仰しました。そのために拝火教とも呼ばれます。イランのヤズドの地にはザラスシュトラが点火したと伝えられる「永遠の火」が、今も燃え続けています。

バクーにもゾロアスター教の「永遠の火」を祀る聖地が残されています。また、インドでは火の神アグニが仏教に大きな影響を与えました。そして「永遠の火」を信ずる教えは中国にも伝わり、さらに日本にも伝わったと考えられています。その象徴的な存在が、比叡山延暦寺で今も燃え続ける不滅の法灯(ほうとう)です。唐から帰朝した最澄が延暦寺に灯(とも)してから、一度も消えることなく今日まで燃え続けていると伝えられています。