富士そば丹道夫会長
ダイタンホールディングス 丹道夫会長 Photo by Kazutoshi Sumitomo

「名代富士そば」を展開するダイタングループの丹道夫会長は、「物件選びこそが全て」と言い、自らを「物件を探す天才」と呼ぶ。儲かる立ち食いそばの物件選びには、どのような極意があるのだろうか。

午前8時に会長が見極める
「理想の物件」の基準

 立ち食いそばを始めてから、ずっと夢に見ていたことがある。毎朝、不動産屋さんから物件の情報が入ってくること。最近、それがようやく現実のものになった。

 東京・渋谷区にあるオフィスには毎日、不動産屋さんから約30枚のファックスが届く。すべて物件に関する情報だ。常務たちはそれを見て、下見へ出かけていく。

 出店候補の物件を探してくるのは、常務たちの重要な仕事だ。良い物件があると、私のところへ「見てください」と資料を持ってくる。

 立ち食いそばには、それに見合った店舗の広さがある。目安はおおよそ20坪。広くても30坪がせいぜいだ。

 出店を検討する際には、必ず最寄り駅の乗降客数を調べる。朝昼晩、そして深夜。どの程度の人が通るかを見るわけだが、とりわけ重要なのは朝だ。帰る時間帯はバラバラでも、出勤時間帯はほぼ同じ。朝降りた人は帰りも同じ駅から乗る確率が高い。朝の時間帯にどれだけの人が降りるのか、を見ればおおよその見当はつく。

 そのため、物件の情報が上がってきたら、まず、午前8時頃の最寄り駅の様子を見に行く。出店の基準にしているのは「5分間に100人以上通るかどうか」。長いことこの商売をやっているため、ざっと眺めただけで、だいたいの人数がわかる。5分間に600人くらい通っているだろうと思ったら、案の定、650人くらいだった。足元を眺めて、地面が見えるか見えないかだけでも判断はつく。

 理想的なのは、大きな交差点に接する角地にある物件だ。加えて、見るのは通行人の「色」。女性は赤や黄色などのカラフルな色の服を着ているが、サラリーマンはほとんどが黒っぽいスーツを着ている。立ち食いそばを好むお客さんの多くはサラリーマンだから、色は黒っぽいほどいい。