AIの時代こそ、
人間とは何か、
人間の精神とは何かが問われる

 哲学や宗教が置かれている立場は、ある意味ではAIの問題が鋭く突きつけているのであって、人間は本当に物質に還元できるのか、還元できないのかというところが最後の問題であるような気もします。

 そういう意味では、脳自身が1万年あまり進化していない中で科学技術が進みすぎたもといえます。

 このギャップの問題がシンギュラリティという問題に直結していると見ることができるのかもしれません。

 だから、科学が進みすぎた現在、もう一度、哲学や宗教から人間を考え直してみるというのは、大変意義がある面白いことのような気がします。

 今回の『哲学と宗教全史』は、どちらかといえば、古代ギリシャの時代から現代までの歴史を中心に書いてきたので、AIについて触れた部分は少ないのですが、AIについて考えることは人間の脳の仕組みを考えることであり、人間という存在を考えることです。

 ですから、答えを解く鍵は、どこまでAIで説明できるかということよりも、人間とは何かとか、人間の精神とは何かを問い続けていくことのほうが正解に近いのかもしれません。

 そういういろんなことを考える一つのよすがとして、この『哲学と宗教全史』を読んでいただけたら大変嬉しいと思います。

(次回につづく)