首脳会議でのドイツのメルケル首相(中央)、イタリアのモンティ首相(右)、ECBのドラギ総裁(左)。対応策が実現するかはドイツの出方次第
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 6月28、29日の欧州首脳会議で打ち出された対応策を受け、スペインをめぐる市場の不安はいったん落ち着いた。

 対応策は、(1)欧州中央銀行(ECB)が関与しユーロ圏の銀行の監督制度を統一する、(2)欧州安定メカニズム(ESM)から各国の銀行へ直接、資本注入を可能にする、(3)スペインの銀行への支援に限り、民間債権者の資金回収の順位が国際通貨基金(IMF)やESMの後にならないようにする、(4)経済・金融同盟の深化に向け工程表を作る、などである。

 特に(2)と(3)は、市場の予想以上に踏み込んだ内容だった。これを受けて29日、7%前後まで上昇していたスペイン10年債利回りは6.3%に低下。世界の株価も大幅に上昇した。

 ただし、「どれも方策として間違いはないが、“本当にできるか”が問題」(中空麻奈・BNPパリバ証券投資調査本部長)だ。この疑問故に、市場心理の好転は長続きしないとみられている。

 (2)については、現状では欧州金融安定基金(EFSF)あるいはESMから政府がいったん資金を借りて銀行に資本注入する形になるため、政府債務が膨らむという懸念があった。この対応策が実現すれば、金融システム不安から政府債務不安への連鎖を、遮断することができる。だがその前に(1)が成立することが条件とされている。

 (1)は2012年末までに検討することとなっており、直接資本注入が可能となるのは最速でも13年からだ。

 さらに、監督の対象となる銀行の範囲、直接注入を受ける条件、それを監督することになる当局にどこまで強い権限を持たせるのかなど、検討事項は多い。「その過程で各国の意見対立が表面化する可能性がある」(岸田英樹・野村證券シニアエコノミスト)。