安倍首相(左)と韓国の文大統領(右)当初の戦略ミスで情報戦では劣勢だった安倍首相だが、文政権の「敵失」によって形勢は逆転した 写真:代表撮影/ロイター/アフロ

韓国への半導体材料の輸出規制強化からはじまった「日韓戦争」。日本のメディアはあまり報じていないが、情報戦で日本は劣勢だった。しかし、文政権が米国の要求を無視して「GSOMIA破棄」を決めたことで、形勢は逆転した。(国際関係アナリスト 北野幸伯)

実は情報戦で
劣勢だった日本

 事の発端は7月4日、日本政府が韓国に対する半導体材料の輸出管理強化措置を発動したことだ。8月2日には、韓国を「ホワイト国」から外すことが決められ、同月28日、実際に除外された。安倍内閣によるこれらの措置は、韓国による「慰安婦問題蒸し返し」「徴用工問題」「レーダー照射事件」などで激怒していた多くの日本国民から支持されている。

「ついにやってくれた」という熱狂の中で忘れられがちなのは、「海外で日韓戦争はどう見られているのか?」という視点である。実をいうと、欧米では、「日韓対立の原因は『歴史問題』であり、日本が韓国をいじめている」という報道が多いのだ。

 在米ジャーナリストの飯塚真紀子氏は8月9日、ヤフーニュースで、米各紙の論調を紹介している。一部抜粋してみよう。(太線筆者、以下同じ)

<「両国の争いは、日本の韓国に対する歴史的態度をめぐって、両国が長年一致しない考えを持っていることに端を発する。化学製品の輸出制限は、安全保障上正当であると言われているが、一般的には、判決(韓国大法院〈最高裁〉が元徴用工らへの賠償を日本企業に命じた判決)に対する報復であると考えられている」(8月1日付ワシントンポスト電子版から引用)>

 実際、半導体材料の輸出管理強化が「徴用工問題への報復」であることは、全日本国民が知っている。政府高官もそう語り、全マスコミがそう報じていた。

 しかし、国際的にみると、「韓国の司法が変な判決を下したから」とか「韓国が日韓基本条約を守らない」ということを理由に「輸出管理を強化する」というのは、まったく筋が通らない。この2つは、「全然関係ない問題」なのだから。

 しばらくして日本政府も、「ロジックがおかしい」ことに気がついた。それで現在は、「これらの措置は、いわゆる徴用工問題とは関係ない。安全保障上の問題だ」などと言うようになった。しかし、「時すでに遅し」である。