「1人1社しか受けられない」「学校の先生経由でしか就活できない」「内定辞退できない」――。
これは高校生が就職活動する際に定められている“ルール”の一部だ。
「100社エントリーしたけれど、内定ゼロ」「複数内定をもらう内定長者」といったエピソードさえ耳にする大卒者は知らない人が多いかもしれないが、高校生の就職活動には大学生のそれとはまったく異なる常識がある。
高校生の就職内定率は98.1%と驚異的だ(平成30年3月文部科学省「高等学校卒業者の就職状況」)。その数字は上記のような“ルール”が支える部分がある一方で、大きな問題も起きている。
高卒者の就職後3年以内の離職率は39.3%と、大卒者の31.8%を7.5ポイントも上回る。さらに1年目で離職した人の割合は、大卒者が11.9%なのに対し、高卒者は18.2%と、早期離職が深刻なのだ(平成30年10月厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」)。
9月5日から企業への応募が解禁になるが、早期離職の要因を探っていくと、皮肉にも内定率を高める“就活ルール”が背景にあることが見えてきた。
就活ルール(1)タイトなスケジュール
就活期間は実質1ヵ月半程度
高校生の就職活動には、主に3つのルールがある。これは、まだ若い高校生に健全な学校教育と適正な就職の機会を与えるため、行政と学校組織、主要経済団体の三者間で作られたもので「三者協定」と呼ばれている。
まず1つ目が「スケジュール」だ。高校生の就職活動は、毎年7月1日に企業が学校に求人票を提出することから始まる。その後、夏休みに入る7月下旬以降からは会社見学会が実施される。9月5日は応募書類の提出が開始され、16日から選考・内定というタイトなスケジュールになっている。
本来は、学業などへの影響を最小限にとどめるための措置だが、それまでに就職やキャリアについて高校生が自ら考える機会は多くない。大卒者の場合、2020年卒までは3月に企業エントリーが開始され、6月に面接解禁だったスケジュールと比較しても、企業を比較・検討する期間が非常に短い。