【寄稿】中国は米国なしでも生き残る
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――筆者のスティーブン・A・マイロー氏は調査会社ビーコン・ポリシー・アドバイザーズのマネジングパートナーで、米輸出入銀行と米財務省の高官として米中戦略経済対話に参加した経験を持つ。

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 米財務省で筆者の元同僚だった中国通のある人物が、2016年の米大統領選前に教えてくれたことがある。中国当局者はヒラリー・クリントン氏よりもドナルド・トランプ氏の方が大統領として好ましいとみているということだ。中国はトランプ氏のことを、交渉しやすい相手と考えていたのだ。

 しかしトランプ氏は、交渉しやすい相手では全くなかった。それは、幾つかの点で米国の国益を損なっている。トランプ氏が発する一貫性のない警告や懇願は、気まぐれな判断のように見えることが多いため、習近平国家主席の目には信頼できない交渉相手と映っている。トランプ氏が公の場で尊大な態度を取っているため、習氏は面目を保ちながら何らかの合意を受け入れるのが難しくなっている。面目を保つのは中国人にとって極めて重要だ。このため習近平氏の交渉姿勢はもはや、熱心なものではなく、形だけになっている。

 米中貿易協議をめぐっては「デカップリング(切り離し)」というのが新たな流行語になっている。トランプ政権の見方からすると、それは米中を完全に切り離し、冷戦時代の二極化に似た2つの異なる経済圏を生み出すという展望を描いて中国政府を脅すものだ。トランプ氏周辺の多くの人々は、中国が米国の技術にアクセスできないようにすることが、世界の舞台で米国を追い越そうとする中国の試みを阻止すると信じている。