東京大学と日本財団が2014年から共同で行っている「異才発掘プロジェクトROCKET」は自分の興味に貪欲過ぎて協調性がないなど、学校での集団学習に馴染めないが異才を持つ子どもたちに様々な学習の機会を提供する取り組みだ。始動から5年が経過し、プロジェクトを取り巻く環境も大きく変化する中で、東大が挑む新しい教育の様子を探ってみた。

特殊な能力を持つ子どもに
対応できない学校教育

東京財団の笹川陽平会長とROCKETスカラーたち
学校に馴染めず「不登校の問題児」とみなされてしまう子どもたちだが、その才能は将来、革新的な研究や商品につながる可能性を秘めている

 日本の学校教育の中では収まりきれない、天才とも呼ばれる能力を持つ異才児たちがいる。そんな子どもたちの多くは、その個性の強さから問題児扱いされて学校に居場所を失い、不登校になりがちだ。

「異才発掘プロジェクトROCKET」(以下「ROCKET」)は、画一的な学校教育では対応が難しい異才を放つ子どもたちに自由な発想と学びの場を提供することを目指し、2014年に東京大学先端科学技術研究センターと日本財団が共同でスタートさせたプロジェクトだ。

「ROCKET」は「Room Of Children with Kokorozashi and Extra-ordinary Talents」の頭文字で、「志ある特異な(ユニークな)才能を持つ子どもが集まる部屋」を意味している。自分の興味に貪欲過ぎて協調性のない子や、周りの空気が読めない子、そんな子どもたちにとことん「こだわり」を追求させる空間であり、またそんな彼らの「こだわり」を必要とする会社や社会との橋渡しもする。

「『ROCKET』は不登校児向けの新しい教育だといって、公教育を否定しているのではありません」と「ROCKET」のスタート時からプロジェクトリーダーとして携わる東京大学先端科学技術研究センター特任助教の福本理恵さんは、ともすれば誤解されがちなプロジェクトの趣旨について説明してくれた。

 東大が教育する「異才」というと、成績優秀な天才児が集められ高度な早期能力開発が行われているようなイメージを持ってしまうが、福本さんは「ROCKET」のいう「異才」とは「能力の高さ」ではなく、異なる行動や視点から既存の常識とはかけ離れた「新しい価値を生み出す素質」を指しており、アメリカで特別な才能を認められたギフテッドと呼ばれる子どもに行われる、優れた部分に特化する早修型の教育とは異なるという。

「子どもたちの『こだわり』の中には、将来何の役に立つの?と聞かれるものもありますが、その未知なる『こだわり』がアカデミックな世界の基礎研究や、革新的な商品につながる可能性があるのです。『こだわり』の価値を一番知っているのが子ども自身で、私たちは好きなことに没頭していく姿を見守るだけです」(福本さん)

 福本さんらは、独自目線で行動する子どもたちの可能性を刺激し、自主性をフォローするだけという。