ダイエットして在庫や売掛金を減らせば、体力向上につながる

 「肝心の千葉精密の健康診断を始めようか」

 川上の呼びかけに、早苗は千葉精密の前期末のB/Sを取り出した(下図表)。

 (1)体の大きさ(総資産)は31億5000万円。
 (2)売掛金と在庫を合わせると20億円を超える。

 かなりの肥満体型である。しかも、
 (3)現金が1億円しかない!

 千葉精密は、まさに「重い貧血状態」である。体力は、負債26億2000万円、純資産5億3000万円。元気がいっぱいとは言えなはい。

 「先輩、千葉精密は体力のない肥満体型です!! しかも貧血!」

 「C社に近いんじゃない? 早急に体力向上とダイエットが必要だね」

 「たしかに。ちなみに、体力の目安になる数値はありますか?」

 「『自己資本比率』だね。純資産÷総資産でもとめられる。一概に何%以上がいいとは言えないけど、製造業なら40%以上あると安全性が高いと言われているね」
 早苗が千葉精密の自己資本比率をもとめると約17%だった。

 「体力アップのためには、やはり利益を上げるしかないんですよね?」

 「さなえの言う通り、利益を上げて分子の純資産(剰余金)を増やすのも大事だ。だけどもう一つ体力を上げる方法として、分母の総資産を減らすダイエットも効果的だ」

 「そっか。ダイエットして在庫や売掛金を減らせば、体力向上にもつながるんですね」
 早苗は、どうすれば千葉精密の健康状態が改善するか方向性が見えてきた。

 「B/Sには『財産』という観点以外に、もう一つ重要な観点がある。お金の『出所』と『使い道』だ」

 つづく

相馬裕晃(そうま・ひろあき)
監査法人アヴァンティア パートナー、公認会計士

1979年千葉県船橋市生まれ。
2004年に公認会計士試験合格後、㈱東京リーガルマインド(LEC)、太陽ASG監査法人(現太陽有限責任監査法人)を経て、2008年に監査法人アヴァンティア設立時に入所。2016年にパートナーに就任し、現在に至る。
会計監査に加えて、経営体験型のセミナー(マネジメントゲーム、TOC)やファシリテーション型コンサルティングなど、会計+αのユニークなサービスを企画・立案し、顧客企業の経営改善やイノベーション支援に携わっている。年商500億円の製造業の営業キャッシュ・フローを1年間で50億円改善させるなど、社員のやる気を引き出して、成果(儲け)を出すことを得意としている。
著書に『事業性評価実践講座ーー銀行員のためのMQ会計×TOC』(中央経済社)がある。MQ会計を日本中に広めてビジネスの共通言語にする「会計維新」を使命として、公認会計士の仲間と「会援隊」を立ち上げ活動中。