2017年から鳴り物入りで始まった介護職種の外国人技能実習制度。特に、中国人介護技能実習生への期待は大きく、「日本の介護現場の人手不足を救う救世主になる」ともいわれていた。しかし、現状はなかなか厳しい。(日中福祉プランニング代表 王 青)
現状は厳しい
中国人介護技能実習生
「こんなはずではなかった」――最近、外国人技能実習制度で中国人介護技能実習生を受け入れた日本の介護施設から、このような声が漏れ伝わってくる。
筆者は当初から中国人介護技能実習生の導入について、「慎重に検討すべきだ」と主張していたが、どうやら筆者の懸念が現実となりつつあるようだ。
外国人の介護技能実習は、2017年11月1日の「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」の施行に合わせ、外国人技能実習制度の対象職種に介護職種が追加されて、始まった(それ以前にも、EPAによるインドネシア、フィリピン、ベトナムからの介護人材の受け入れはあり)。
その背景は、いうまでもなく、人手不足だ。日本のサービス業はどこも労働力不足に悩んでおり、特に介護業界は深刻だ。その理由は明白で、介護施設には人員配置の最低基準があり、その基準に達しなければ、そもそも事業が継続できない。
このため、外国人実習生の中でも、特に中国人介護技能実習生に対する期待は大きかった。
その理由は、(1)中国人は日本人と同じ東洋人であり、容姿だけでなく、文化的にも日本人の高齢者が親しみを感じやすい、(2)漢字が読めるため、日本語を覚えやすく、日本語能力試験も受かりやすい、(3)一人っ子政策があった中国では少子高齢化が急速に進んでおり、介護に関心を持つ人が多い――などだ。
加えて、外国人技能実習制度とは、日本が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくため、技能、技術または知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的とする制度である。