広瀬すずさんPhoto:JIJI

少年時代の記憶を呼び覚ます
『なつぞら』の細かすぎる演出

 NHK朝の連続テレビ小説『なつぞら』が佳境にさしかかっています。アニメ業界の黎明期を駆け抜ける主人公・奥原なつを広瀬すずさんが演じ、1960年代から70年代を代表するアニメ作品を彷彿とさせるエピソードが満載という意味でも、毎朝楽しめるドラマだと思って観ています。

 私は最近のアニメにはそれほど詳しくありませんが、こと、この年代のアニメについては滅茶苦茶詳しい自信があります。なにしろ少年時代のリアルタイムの思い出に直結する話ですから。

 私の人生において、初めて父に映画館へ連れて行ってもらい鑑賞したのが、東映動画のアニメ映画『太陽の王子 ホルスの大冒険』でした。映画の途中から飽きて館内を走り回る私を見て、父は「この子は落ち着きが足りないんじゃないか」と悩んだそうです。ところが『なつぞら』でまったく同じエピソードが紹介されたお陰で、あの映画についていけなかった子どもは私だけでなかったことが判明し、50年ぶりに父の私に対する疑惑は晴れたようです。

『なつぞら』はこのように、あの時代のアニメへのオマージュともいえる演出が満載なことが人気の一因です。あまりメディアで取り上げられていない細かすぎて伝わらない演出を、いくつか指摘してみましょう。

 たとえば、ドラマの中に登場するアニメ作品『大草原の少女ソラ』で、初めて鶏が産んだ卵をおいしそうに焼くシーンにおいて、においでそのおいしさを表現するのは、宮崎駿の『未来少年コナン』でコナンとジムシィが見せた演技そのままです。