千葉の大規模停電が暗示した安倍長期政権の「金属疲労」台風15号で瓦が吹き飛ばされ、屋根が損傷した千葉県の住宅。千葉では大規模停電が発生し、政府の対応を巡っては批判の声が上がっている Photo:JIJI

「危機管理は初動が全て。ここで失敗すれば、あとは何をやっても後手後手に回る」

 長く警察庁で危機管理を担ってきた幹部OBは、台風15号による大規模停電を巡る政府の対応を厳しく批判する。猛烈な強風を伴う15号が千葉県に上陸したのは9月9日午前5時前。この日、メディアが大々的に報じたのはJRの計画運休など、公共交通機関が大混乱に陥ったニュースだった。

 しかし、その裏では大規模停電が発生していた。10日になると、千葉・房総半島はとんでもない事態になっていたことが判明した。

「千葉県停電50万戸、断水続く 高齢者2人死亡、熱中症か」(10日配信の共同通信ニュース)

 17日午後10時に東京電力パワーグリッドが記者会見した段階でも約5万8000戸が停電したままで、停電解消の見込みは9月27日と発表された。首都東京の隣県でこれほど長期に、しかも広域に「陸の孤島」が生まれた事態は深刻だ。東電の対応のお粗末さもあったが、ここまで被害が拡大すれば、一企業の対応能力をはるかに超えていた。政府の出番だったが一向に存在感は見えてこなかった。

 その原因は言うまでもなく11日に行われた内閣改造だ。改造前日の10日は、千葉県で進行する深刻な事態は眼中にないかのようだった。入閣する政治家の名前が次々と判明し、政界、メディアは改造一色。大規模停電は後ろに追いやられてしまった。