現在、大きな会社ではタレントマネジメントのシステムなどを導入し、関係会社を含めて、グループ内の優秀な人々を発見し、活用してようとしている。とはいっても、人の能力を把握するのに一緒に働く経験に勝るものはない。実際に社長が仕事を一緒にやって優秀と認めた人であれば、もともとどの会社に就職したかは関係ない。それが関係会社であって、本社でなかったとしても、当たり前のように必要な部門の必要な重職に登用すればよいのだ。(人事上の処遇はそれに合わせて対応すればよいだけのことである)。

 無意味な本社至上主義、純血主義、生え抜き主義、本社の関係会社に対する優越感や関係会社社員が本社社員に抱く序列意識は、関係会社にもたくさんいる優秀な人材を不活性にしたまま、見過ごしてしまう。よい大学を出て面接を上手にこなして本社に入れる能力と、実際の仕事の場面で成果を出せる能力は別ものだ。貴重な人材を活用しない手はない。

関係会社を苦しめる「成仏マネジメント」
変革のキーマンは社外取締役

 さて、これまで述べてきたようなことは、多くの人に賛同してもらえると思う。しかしながら、今のままでは変革を期待できない。なぜなら本社の社長や人事部にとって、役員の人たちに規定のルートに沿った“上がりの席”を用意して、気持ちよく去ってもらうことは、とても重要な仕事であるからだ(口の悪い人は“成仏マネジメント”と呼んでいる)。

 そこで失敗すると、本社に甚大な被害をもたらすような、とても面倒くさいことが起こるという大きな不安があるのだ。とはいえ、素人経営者の安泰な余生のために関係会社が利用されている状況は、株主視点からも、もちろん関係会社の従業員の立場からも、とてもほめられたものではない。
 
 ではどうすべきか。こういうときこそ、本社に余計なしがらみのない、「社外取締役」の出番である。グループ経営という視点に立ち、関係会社の社長や役員に対して、求める知識、経験、スキルなどを明確にして、関係会社とも協議のうえ、それにあてはまる人を選び出す仕組みを、執行側の経営者たちに構築させるよう仕向けるべきである。

 昨今、本社は持ち株会社化していて、実業にタッチしていないことも多い。ならば、持ち株会社の取締役にとって、グループ会社の適正な人事をチェックすること以上に重要な役割はないくらいである。