「親会社と子会社の社員同士の激突」

 そう聞くと多くの方が、子会社に出向をした親会社の社員が子会社の社員に対して、上から目線の態度をとるために生じたのだろうと思われるかもしれません。しかし、実際多いのはそうした理由ではありません。

 「新しい職場で心機一転頑張ります」と、むしろ職場に溶け込む努力をする出向者が大半です。なぜなら、子会社に出向した親会社社員は“新しい職場”ではマイナーな存在だからです。

 ところが、その「頑張ろうとする姿勢」が逆に周囲と大きな溝を生んでしまう場合があります。それは、親会社と子会社の社員には意外なところに気質の違いがあるからだといえます。今回は、そのギャップの実態をご紹介しましょう。

「子会社への出向」に
“複雑な想い”を抱く部下たち

 あなたの職場では、人事異動はどれくらいのペースで行われていますか?年に2回程度でしょうか。大抵の会社は、事業計画を1年単位で立て、スタートのタイミングと同時に組織を再編しますので、春先は「転勤する同僚の送別会」、逆に「別の部署からの異動してくる人の歓迎会」などで職場がざわつくものです。

 先日、取材した通信機器の商社では年初に全社員の2割が異動するとのこと。まさに民族大移動のような事態となり、異動してくる社員によって職場の雰囲気が変わってしまう会社もあるようです。そして半年後、組織の修正のために多少の配置転換がある。このようなペースで人事異動を実施している組織が大半ではないでしょうか(ベンチャー企業はもっと頻繁に人事異動を行っている場合もあります)。

 ちなみに、多くの社員は異動する数週間前に上司から配属先を聞かされます。私も職場で上司として、「ちょっと、いいかな」と異動する対象の部下に対して声をかけて、「4月から大阪支社で頑張ってもらうから」などと人事異動の旨を部下に伝えていました。いわゆる、『内示』です。

 その際に上司は、期待を込めた言葉で部下のやる気を促します。ところが、その異動先が同じ会社でなく子会社への“出向”だとしたらどうでしょうか。上司も前向きなコメントに窮するかもしれません。

 私が上司として、「●月▲日付で子会社へ出向してもらうから」と告げた部下の大半も、聞いた瞬間に戸惑いとガッカリ感が態度に表れていました。