【社説】日米貿易協定、トランプ氏の損失補填Photo:Reuters

 ドナルド・トランプ米大統領は25日、日本との間で、細身になった貿易協定を発表した。2年前に「環太平洋経済連携協定(TPP)」を離脱して自ら招いた打撃を緩和するものだ。トランプ氏が貿易の試合で勝利を重ねたいのなら、オウンゴールを止める必要がある。

 トランプ氏はTPPを捨てた際、二国間貿易合意を目指すと言明した。だが、安全保障の名の下、鉄鋼に25%、アルミニウムに10%の関税を課し、自動車に対する追加関税をちらつかせた。これに対し、米国以外の11カ国はTPPを発効させ、日本はそれとは別に欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)も発効させた。

 以来、米国の農家は日本で劣勢に立たされている。日本の4~7月(EUとのEPAおよびTPP両方の関税引き下げ後の当初4カ月)の農産品輸入は2016~18年の同期に比べ、欧州産が15.9%増、メキシコ産が27.6%増、ニュージーランド産が16.9%増となった。これに対し、米農家から日本への輸出は5.8%増にとどまった。中国の関税で世界貿易の流れが変わったことが影響した。

 日本の豚肉輸入は、米国産が1%減少した一方で欧州産が17%増加し、米国の市場シェアは3.7ポイント縮小した。欧州は乳製品でもシェアを3ポイント伸ばし、米国のシェアは横ばいとなった。こうした状況はウィスコンシン州の酪農家を窮地に追いやっている。日本が(米国以外の国に対する)関税を段階的に引き下げるなか、今回の協定がなければ米国の酪農家は一段の衰退を経験したことだろう。