
学習塾の「第一ゼミナール」を展開するウィザスに対し、シンガポールの投資ファンド、グローバル・ESG・ストラテジー(GES)が株主提案を出したことが分かった。GESによるウィザスへの株主提案は2年連続となる。GESは7人の取締役の選任と、買収防衛策の廃止を求めている。特集『株主総会2025』の本稿では、GESが経営陣総入れ替えの“レッドカード”を突き付けた理由に加え、株主提案の具体的な中身やその狙いを解説する。(ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)
第一ゼミナールに株主提案
7人の取締役の選任を要求
学習塾の「第一ゼミナール」を展開するウィザスが6月に開く株主総会に向け、シンガポールの投資ファンド、グローバル・ESG・ストラテジー(GES)が株主提案を出したことがダイヤモンド編集部の取材で分かった。GESはウィザス株の20%弱を保有しており、同社への株主提案は2年連続となる。
ウィザスは創業者で元会長の堀川一晃氏が前身となる学研塾を1976年に設立。社名は2003年に現在のウィザスとなった。同社は関西を中心に展開する第一ゼミナールに加え、通信制高校の「第一学院高等学校」を運営し、近年は通信制高校を含む高校・大学事業が業績をけん引している。
GESは昨年の株主提案で、主に創業家によるガバナンス不全の見直しを求めた。例えば、堀川氏はウィザスの子会社社長に30年超在任し、息子の直人氏も孫会社社長を15年以上務めていた。GESは創業家によるグループ会社の「私物化」に懸念を表明し、子会社の取締役の任期制限などを求めた(『【独自】「創業者の子会社私物化にノー!」学習塾の第一ゼミナールに株主提案、買収防衛策でも創業家を“特別待遇”』参照)。
ウィザスはGESが提案した10の議案の全てに反対。創業家によるグループ会社の役員就任の制限に関しては、「『私物化』を図っている事実はない」などと反論した。20%超のウィザス株を保有する創業家などが反対に回り、株主総会で10の議案は全て否決された。
ただ、その後、ウィザスはGESから指摘された点の見直しに動いた。GESが昨年12月に出したプレスリリースによると、GESは堀川氏や直人氏らが子会社や孫会社の社長を退任したことを確認したという。GESはリリースの中で「ウィザスのコーポレートガバナンスについて一定の改善があった」と評価している。
ところが、GESは今年も株主提案を出した。株主提案の主な柱は2つで、昨年に続く買収防衛策の廃止と、7人の取締役選任の提案となる。後者は、現執行部の実質的な総入れ替えを求める厳しい内容だ。
次ページでは、ダイヤモンド編集部が入手した株主提案書を基に、GESが経営体制の刷新を要求するに至った2つの理由を解説する。また、GESが提案した7人の取締役候補は、メガバンクや大手百貨店などの役員経験者や教育分野に知見を持つ人物らだ。顔触れを紹介するほか、人選の狙いについても明らかにする。