ベンチャーキャピタル・パートナー、外資系コンサルティング会社日本代表、事業会社の経営者などを歴任してきた伊藤良二慶應義塾大学政策・メディア研究科教授に、事業家としての目線から、投資ファンドの功罪についてお聞きしました。今回はその【後編】をお届けします。【前編】はこちら

存在感を増すファンドと
企業はどう付き合うべきか

――シュローダーでベンチャーキャピタル部門に在籍されましたが、ファンドビジネスに転身された経緯はどういうものですか?

 新しい事業を育ててみたいと思ったから。ただ、蓋を開けてみると、ファンドはやはりファンドの投資家のために働かないといけない。投資決定をする時に、ファンドは経営者の決断の軸と同じ軸では決断ができない。持分を売却するときも、投資先にとっては今は売却のタイミングでなくとも、ファンドの投資家のためには今売却しないといけないというタイミングが存在する。そもそも出資時も、経営者は高く株式を買って欲しい一方、ファンドは安く買いたいと思っているので、ファンド対経営者の利害相反は出資時から発生してしまう。その矛盾に答えが出せなかったのでファンドを去ることにした。

――そうすると、経営者はそういうジレンマを認識した上で、うまくファンドと付き合って行かないといけないわけですね。

 そう。ファンドは最初にその事業の成長ではなく、いかにexitできる(持分を売却する)かを考えるものであることを、経営者は認識すべきだ。ファンドの行動基準は数字のみなので、意外と理解しやすい。

 また、ファンドは、大企業にとっては、リストラや子会社を切り離す局面では使いやすいし、身内ではできないこともファンドという大義名分を使えばできることもある。

――では、そういう経営者の方々からファンドの存在意義ってなんでしょう?って聞かれると何と答えますか?