日本軍兵士がたびたび暴走したのはなぜか。明治初期の「バグ」に目を向けたイスラエル人軍事史家のダニ・オルバフさんと政治学者の姜尚中さんが、今の日本に引きつけて語り合った。AERA 2019年9月30日号に掲載された記事を紹介する。
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姜尚中:昨年は明治維新からちょうど150年。明治国家を振り返り、改めて考察する年となりました。ダニさんが著した『暴走する日本軍兵士──帝国を崩壊させた明治維新の「バグ」』(朝日新聞出版)は、明治初期は明るかった日本が日露戦争を経て暗くなっていったという、日本人の共通意識を覆す内容です。
ダニ・オルバフ:多くの日本人は、日露戦争が終わってから日本は落ちていった、と思っていますよね。実は明治国家が始まった時に、不服従のルーツとなる志士イデオロギーというバグがすでに存在していたのです。
姜:明治維新後、華々しかった日本が次第に変質して国家主義へと変わっていった、というコンセンサスは、丸山眞男にも司馬遼太郎にもありました。それに対して、この本では「そうではない」と間接的に言っていますね。こうしたダニさんの論によって、近代史の見方が今後変わってくるかもしれません。