患者中心の医療から患者協働の医療へ
後閑:鈴木さんは「患者中心の医療から患者協働の医療へ」という思いで活動をされていますが、医療者は患者中心の医療となっていて、患者さんのためにという名目のもと、いろんな人たちがああじゃない、こうじゃないと話しますが、実は患者さんは蚊帳の外になっていて、それが本当に患者さんのためになっているのかというと甚だ疑問に思うことがあります。
鈴木:医療者に聞くと、カンファレンスにはその人の人生観を確認しないまま入っていくと言うんです。それってどうなの? と思っています。
本来はそこで、「この人はこういう生き方をしたいと思っています」という話があった上で、そのためにどうするかという話になるのが、あるべきカンファレンスだと思うんです。
そう言うと、「今の医療現場では確認する時間やタイミングがない」と言われるのですが、そんなの最初の入院の時の問診票だったり、アンケート調査したり、やろうと思えばタイミングは作れるはずなんですよね。そんなに手間のかかる話じゃないのに、とても大事なことが落とされていると思うんです。
後閑:そうですね。私は療養病棟で働いていますが、医師との面談に患者さんは同席していないんです。
鈴木:えっ! 本人が入れないの? 家族は?
後閑:ご家族はいます。希望すれば本人も入れますが、そもそも認知症や寝たきりの患者さんが多いので、自分の意思をうまく伝えられない患者さんが多いからでもあります。
けれど、話すことのできる人もいるのに、自分の人生の最期を蚊帳の外で決められています。意外とご年配のご家族は「本人は気が弱いから、死ぬなんてことは伝えないでください」と言ったりします。
鈴木:私なら嫌だな。
後閑:これは医師の考え方で変わるとも思っています。
知り合いの先生は、面談が本人に関することなら、本人なしでは話をしないと言っています。たとえ寝たきりでしゃべれなかったとしても、治療方針は本人の前で決めると言う先生もいます。
逆に、本人に嘘は言わないけど、家族にだけ「もうそろそろですよ」と話をしたりというのが現状のようです。
鈴木:医療者側に頑張ってほしいところはありますが、患者や家族側ももう一段頑張らないといけないと思っています。
そもそも今日は人生観の話をしていますが、それを文字に起こせと言われてできる人はすごく少ないです。実際、僕は前回、お薬手帳を健康手帳にしてと言いましたが、それすらできる人はほとんどいないです。これはそもそも日本の文化が遅れている部分だと思っています。
自分の人生観、何のために生きているのかということを日頃から考えておく。特に若いうちから。
子どもなんてもっと発想豊かに考えられるんですから、そういうことを文字に起こすことを当たり前にしておく、そういう文化が欲しいと思うんです。これをお読みの方々に、まず自分の人生観の書き出しをやってみてほしいです。
後閑:自分がどう生きたいか、自分は何をしたいか、ですね。
鈴木:それを書いておくんです。
大変だと思います。私も初めて書いた自分の要望書には、とりとめのないことが書いてあったりもします。
文字化すると、だんだん自分の人生観も見えてきたりします。皆さんにやってみてほしいですね。
つい、家族、親、祖父母のためになんて思うかもしれませんが、まずはあなた自身が何のために生きているの?どう生きたいの? と考えてみるといいです。
後閑:病気でも「健康」に生きるために、一人一人が意識を持って、ですね。
鈴木:私が書いた本は一見ノウハウ本ですが、そもそも病気の前にあなたが一人の人間として健康に生きるためには何をすべきかというのが書かれているので、ぜひ手にとっていただけると嬉しいです。
最初のところの質問で「いきなりですが質問します。自分にとっての健康とは具体的に何がどうなった状態ですか?」と書いていますが、それを考えてご家族と共有していただきたいです。そこをちゃんと言葉で表せるというのが自分のよりよい人生のスタートだと思っています。
(2)長生きは、どう生きたいかという目的を支える手段のひとつである
(3)患者中心の医療から患者協働の医療へ