大手3キャリアの値下げ競争に火が付かないのは、楽天が新規参入に失敗したことが大きい。果たして楽天は、総務省が悲願とする「4社競争体制」の一角を担えるか。特集「携帯激震!総務省vsキャリア3社」(全5回)の第2回で、その課題を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 村井令二)
楽天携帯はつながるのか
5000人実証実験スタート
携帯電話事業に新規参入する楽天の携帯サービスがいよいよ試される。10月11日、限定5000人の「無料サポータープログラム」の当選者が発表になり、インターネットを通じて申し込みの受け付けが始まった。
楽天は、10月1日に携帯事業に新規参入する予定だったが、基地局の整備が遅れており、本格的な事業開始を延期している。
それに代わって5000人による実証実験を開始した。今後、これらのユーザーによって、楽天の通信ネットワークの品質やカバーエリアが厳しく評価される。
今や、都心部で携帯電話の表示に「圏外」の文字を見ることはほとんどない。安定した通信品質に慣れ切ったユーザーの間に「楽天の携帯はつながらない」というイメージが定着すれば、今後の事業展開に計り知れないダメージを与えることになる。
通信インフラ整備が
間に合わなかった理由
楽天が直面している最大の課題は通信インフラの整備だ。
ゼロから通信インフラを構築しなければならない楽天が最初から日本全国に通信ネットワークを張り巡らせるのは難しい。当面、KDDIの基地局を借りる「ローミング(相互接続)」によってカバーされる。楽天がまず通信インフラを整備するのは、KDDIがローミングを認めない東京23区、名古屋市、大阪市の三大都市が中心になる。
日本地図で見ればごく狭いエリアだが、三大都市では人口が密集しており、基地局整備は難航を極めている。
楽天が総務省に提出した基地局の開設計画は、2020年3月末までに3432局。これに対して、10月15日時点の設置状況は約1600局に達した。1カ月前より1000局増やして急速に巻き返しているが、来年3月末までに計画通りに整備できるかどうかは予断を許さない。
すでに、総務省から基地局整備の遅れを理由に3回にわたって行政指導を受けたが、求められたのは進捗管理の徹底だ。総務省のある幹部によると「楽天は工事業者に基地局建設を丸投げしており、進捗状況をまったく把握できていなかった」という。
インターネットサービスが主力の楽天にとって、ビルや空き地にアンテナの設置を行う工事業者との調整作業は未知の領域で、基地局の設置は手探りで進めているのが実情のようだ。