『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』の著者ヤニス・バルファキスによる連載。今回はフェイスブックの暗号通貨「Libra(リブラ)」構想に関する論考です。リブラは優れたアイデアであるものの、民間企業が手掛ければ政治経済にシステミックな脅威をもたらす恐れがあり、その実現は国際通貨基金(IMF)に委ねるべきだと提言します。
国際金融に革命を起こすことを意図した資産担保型の暗号通貨「リブラ」の母体となる、フェイスブック主導の企業連合「リブラ協会」は、解体しつつある。
ビザ、マスターカード、ペイパル、ストライプ、メルカドパゴ、イーベイは、すでに脱退を決めた。リブラに懸念を抱き、急いでブレーキをかけようと決意した各国政府からの圧力が高まる中で、こうした流れに追随する企業は増えていく可能性が高い。
これは良いことだ。リブラを使ったフェイスブックによる国際決済システムの民営化を放置すれば、人類は苦しむことになっただろう。だが、現在リブラの押さえ込みにかかっている各国当局は、将来を見据え、リブラに関して何か革新的で有益な、先を読んだ手を打つべきだ。
すなわち、リブラを(あるいはその中核となるコンセプトを)国際通貨基金(IMF)に委ね、グローバルな貿易不均衡の縮小、資金フローのバランス回復のために活用できるようにするという案である。実際、リブラのような暗号通貨があれば、IMFは本来の目的を達成しやすくなる可能性がある。