中国の飲食店の「監視映像」が日本のおかしな価格設定を示唆
中国・北京の中華料理店で見掛けた、厨房の様子を映す液晶画面 Photo:Izuru Kato

 先月、中国・北京で中華料理店に行ったところ、客席から見える位置に大型の液晶画面が設置されていた。スポーツ中継等のためではない。厨房の様子を多数のカメラで映していた。「当店がお客さまにお出しする料理は衛生的な環境で作られています。隠し事はございません」というアピールなのだった。

 その数日後に行った中国・上海の五つ星ホテルのレストランも、厨房をライブで見せる液晶スクリーンを壁に掲げていた。しかも、厨房内のカメラが次々と切り替わり、死角が生まれないようになっていた。たとえホテルの「格」が高くても、客の目が届かない“ブラックボックス”があると中国の消費者は安心しないようなのだ。

 そういえば、昔から上海の小籠包店の多くは、店員が具材を皮で包む作業をガラス越しに見せてきた。小籠包という料理は食べないと中身が見えない構造なので、製造過程の透明性が重要だという。

 中国で多店舗展開している火鍋チェーン「海底労」は、厨房にパナソニック製のロボット技術を大胆に導入して昨年大きな話題になった。日本人は「省力化のため」と受け止めがちだが、それは違う。厨房で人間が食材に触る頻度をできるだけ低下させることで消費者の信頼を得ようとする試み、という点で評価されている。

 このような状況なので、近年日本の居酒屋業界で繰り広げられている激安競争の話を中国で説明すると、ふに落ちない様子である。

 例えば居酒屋チェーンの「鳥貴族」は、2017年秋に価格設定を全品280円から298円に値上げした。もともと激安で、しかもわずか18円の値上げなのに、客は価格据え置きの競合店に流れた。それを見て値上げをためらう店が続々と現れた。

 生ビールやハイボールを戦略的に値下げして客を呼び込もうとする店も東京では最近増えている。先日北京と上海を回ったときは「もしかすると東京の方が安い?」とさえ感じられた。

 基本的に日本では高齢化・人口減少によって需要が縮小している。「居酒屋・ビヤホール等」の年間売り上げ(日本フードサービス協会)は1992年がピークで、それ以降は減少トレンド。昨年はピーク時よりも30%減だ。

 ところが、供給サイドでは店舗が意外に減っていない。日本銀行が金融緩和策で超低金利環境を生み出しているため、飲食店の借入金に対する利払い費は小さく抑えられている。結果的にそれは低収益店舗の“延命”につながっている。また、大手飲食チェーンは金融機関から一層の低金利で資金調達が可能なため、新規出店を積極的に拡大してきた。

 そうして、日本の居酒屋業界は血みどろの低価格競争を繰り広げている。しかし、こうした話をすると中国人の多くは「料理は安ければいいというものではないのではないか? 安い店にはリスクがあると消費者は考えないのか?」と不思議がる。確かにわれわれは同胞の倫理感を信じているのか、激安店でも「厨房をスクリーンに映せ」と要求したりはしない。

 そういう不信感がないのは素晴らしいことだが、日本の激安居酒屋の品質に問題がないのならば、海外の基準でいえば、同店は適正な利潤を得ていないことになる。それでは店員の給料も十分に増えない。

 過当競争下では難しい面があるが、クオリティーに見合ったプライシングへの理解が日本で広がっていくことが本来は望ましい。

(東短リサーチ代表取締役社長 加藤 出)