眼科での受診が多い「飛蚊症」
実は2種類に分けられる
ある患者さん(50代・女性)が、「2日前から急に視界に動く物体が見えるようになって。視線を動かすと一緒に付いてきて、目や脳の病気じゃないのか心配です」と、私の外来を受診されました。特に、白い壁を見ると、目の前に急に虫が現れたような感じがするとのこと。
これは、私の外来を受診される方が訴える目の不調の中で最も多い症状の1つであり、みなさんにも身近に起こりうる症状で「飛蚊症(ひぶんしょう)」といいます。
飛蚊症を訴える患者さんは「蚊が飛んでいるけど、つかめない」「うっすらと雲が動いて見える」など、さまざまな表現をします。飛蚊症は人によって感じ方がいろいろで、形、色、動き方によって表現が変わるため、症状は複雑になっています。
この病気は、経過観察で良い「生理的飛蚊症」と治療を要する「病的飛蚊症」に分かれます。特に「病的飛蚊症」の場合は、網膜剥離の前兆とされることもあるので、なるべく早めに眼科へ行かれることをお勧めします。
「飛蚊症」は高齢の人や
近視の人が自覚しやすい
飛蚊症は簡単にいうと、自身の目の中の混濁が見えている現象です。もともと、眼球の内部の大部分は硝子体と呼ばれる透明なゼリー状の組織で満たされています。
そして、その硝子体は99%が水分で構成されており、若い時は透明で濁りはありませんが、年齢を重ねると濁りが出てきます。この硝子体の中の濁りに光が通ると影が見えて飛蚊症の症状が出てくるのです。
この影は目の中でゆらゆらと揺れます。そのため、飛蚊症はあたかも蚊が目の前を飛んでいるかのごとく見えます。眼球を動かすと影も一緒に動くことが飛蚊症の特徴でもあります。
飛蚊症は目の中の硝子体の濁りが原因であると解説しましたが、その原因はさまざまです。まず「生理的飛蚊症」は、年齢の進行が関係します。
生理的飛蚊症という名がつく通り、加齢変化の一種なので、大部分の方が年齢を重ねると自覚されることが多いのですが、病気ではありません。
また、近視が強い方に飛蚊症が出やすいこともわかっています。濁りが目の中の光の通り道に存在する限り、飛蚊症が完全に消えることはありませんが、飛蚊症に慣れてきて気にならなくなる方が多いようです。