女性の産休・育休制度に続き、男性の育児休業取得率を上げる政策も打ち出されているが、いかんせん伸び悩んでいるのが現実だ。この背景には、最近話題になることの多い「パタニティハラスメント」や、「育休を取ると出世できない」という事情が関係しているようだ。一般社団法人・職場のハラスメント研究所の所長である金子雅臣氏に話を聞き、「男性育休」のリアルに迫る。(清談社 鶉野珠子)
新卒から勤続することで実績を積む
日本では育休取得は経歴上不利に
今年の春先、カネカやアシックスの「パタハラ疑惑」が世間をにぎわせたことを覚えているだろうか。「パタニティハラスメント」は、「育休」と呼ばれる育児休暇や育児休業を取得した男性社員に対する嫌がらせのことで、妊娠した女性社員に対する「マタニティハラスメント」とともに、最近話題になることが多いハラスメントのひとつだ。
カネカでは、育休から復帰した直後に地方への転勤を言い渡され、アシックスでは育休から復帰後、これまでの業務とは異なる職場への異動を命じられた男性社員がいたという。これらの処遇は「左遷」とも捉えられ、実際に辞令を出された当事者たちは「育休を取ったことに対する『見せしめ』のように感じた」とコメントしている。
しかし、雇用主の立場に立って考えてみれば、育児休業で数ヵ月分も業務上の遅れをとっている社員は、以前と同じような待遇で扱えないというのが正直な意見ではないだろうか。また、第2子、第3子と子どもを望み、今後も長期離脱の可能性があるのなら、会社としては、なるべく負担の少ない業務を任せたいというのもうなずける。
現在、社会における「男性の育休」は、どのように捉えられているのだろうか。
「まだまだ理解も議論も進んでいませんね。女性の『産休』は、本人の身に直接降りかかる『取らざるを得ない状況』なので会社側も許容してきていますが、男性の『育休』は、いまだに『選択できる状況』『取ることが不可欠ではない』という認識が強いというのが現状です」(金子さん、以下同)