香港を拠点とするアクティビストファンド、オアシス・マネジメントの創設者で最高投資責任者(CIO)を務めるセス・フィッシャー氏が10月下旬、都内でダイヤモンド編集部のインタビューに応じた。現在、日本の十数社に対してエンゲージメント活動を行っていると明らかにし、そのうちの一つとされるセブン&アイ・ホールディングスについては「バリュエーション(株価評価)を上げられる」と断言した。特集「アクティビスト日本襲来」(全12回)の#8では、日本企業に対する海外アクティビストの視点を紹介する。(ダイヤモンド編集部 重石岳史)
2週間に1度のペースで来日
「企業の変化を目の当たりにしている」
――例年、秋から冬にかけてのこのシーズンに来日し、投資先の企業経営者と面談されるのでしょうか。
2週間に1度は日本に来ているよ。昨日は定宿にしているホテルから賞をもらった。100回目の宿泊記念でね(笑)。
決算発表を終えたばかりのこの時期は、企業側と時間をかけて対話ができる良いタイミングだ。今日も投資先企業の取締役メンバーと会合を持ち、われわれが企業をどう見ており、どのような協力ができるかをお伝えしたところだ。
――長年日本で投資活動を続けられ、アクティビストに対する日本の経営者の対応の変化を感じますか。
非常に感じている。私が今、日本で目の当たりにしているのは、われわれが企業の価値向上に貢献したいという姿勢を、企業側が理解してくれているということだ。われわれはビジネスを改善するために尽力したい。そのための最良の方法は、お互いに協力することだ。そのためにわれわれは膨大な作業をこなし、しっかりと中身のある提案を行っている。
われわれにとって日本は非常に重要な市場で、日本市場のためにかなりの人数を割いてチームを構成している。僕のかばんの中身は見せられないが、1企業当たり約100ページのプレゼンテーションの資料が入っている。
今日の会議でも、真のコーポレートガバナンスの確立や収益改善に向け、どのような独立社外取締役の形が理想なのかについて議論した。また新たなM&A(企業の合併・買収)の機会や財務についても互いに話をした。企業とわれわれが協力して経営課題に取り組む傾向が強まっている。
――なぜそのように変化したと思いますか。
2000年代の“悪い”時期から非常に時間はかかったが、コーポレートガバナンス・コードやスチュワードシップコードが導入され、外国人投資家が増えたことで大きく変わったと思う。われわれは時間をかけて日本を理解しようとし、日本の企業側も、われわれが単なる金もうけではなく、企業の改善のために努力している姿勢を理解してくれているように感じる。
かつてのアクティビストは高リターン狙いだったかもしれないが、今の世代のアクティビストは全てのステークホルダーと協力し、企業価値を高めることに重きを置いている。