アクティビストの存在感が増すにつれて、反発も強まってきた。その代表的な存在が「国家」だろう。政府は今国会に、国の安全保障に関わる投資への外資規制を強化する外為法改正案を提出した。特集「アクティビスト日本襲来」(全12回)の♯11では、「アクティビスト排除法」との批判もある同法案のインパクトを検証する。(ダイヤモンド編集部副編集長 布施太郎)
寝耳に水の金融庁
市場への悪影響を懸念
「こんな改正案がそのまま通ったら、今までの努力が水の泡だ」――。
9月下旬、金融庁の幹部は驚愕した。11月22日に国会で成立した外為法改正案の素案を、事前に財務省から聞いたときのことである。
改正外為法は、安全保障の観点から、外国人投資家が日本企業の株式を取得する際に必要だった事前届け出の基準を、これまでの取得後の持ち株比率10%以上から1%以上に引き下げる内容だった。同幹部は即座に「市場から不安や反発が出るのは不可避」と予想した。
東京の株式市場は外国人投資家に支えられているのが実態だ。しかも、グローバルマネーを呼び込める市場育成に注力してきたのが金融庁だ。
2014年と15年に相次いでコーポレートガバナンス・コードとスチュワードシップ・コードを導入し、上場企業には投資家からの期待に応えるように仕向け、機関投資家には投資家としての責任を全うするように制度を整えた。両コードの導入を巡り、当初は経済界から「投資家・株主の権限が強まり、日本型経営の良さが失われる」などの強い反発が出たが、金融庁が根気よく説得に回った経緯もある。
政府の政策に反応して外資マネーも流入。上場企業における外国人持ち株比率は、12年の28.0%から安倍政権が本格始動した13年に30.8%、14年には過去最高の31.7%にまで上がり、その後も3割前後を維持する状態が続いている。
「日本の資本市場が変わったというメッセージが明確に打ち出され、海外投資家からの問い合わせも一挙に増えた」と、外資系証券のストラテジストは振り返る。「景気循環の要因もあるが、両コードの導入が果たした役割は小さくない」。日本企業の稼ぐ力やガバナンスの強化に注目が集まり、外資マネーを引き寄せるきっかけになったのは間違いない。
だが、この流れに水を差しかねないのが今回の改正外為法である。