参議院選挙前に「老後2000万円」問題が炎上したのは記憶に新しいと思います。「どうやって2000万円も準備すればいいのか?」と嘆いている人も多いかもしれませんが、冷静になってください。何もそのお金を準備するのは、給与からの積立投資だけで形成する必要はありません。そうです、多くの企業には退職一時金制度や企業年金制度(以下、まとめて退職給付制度という)がありますから、そこである程度まとまったお金を得ることができるのです。「そうだよね、退職金があれば、老後は安心なんじゃないの?」と思う方も多いでしょう。でも、現実はそんなに甘くありません。総務省がまとめた家計調査には、当然、退職金などをもらった人も含まれており、それを考慮しても毎月5万円程度足りないということなのです。「そんな殺生な…」との声が聞こえてきそうですが、状況はさらに悪化しています。
そこで今回は、日本の退職給付制度の現状を確認しつつ、改めて自助の必要性について考えてみたいと思います。
退職給付制度を提供する企業は減少
退職給付制度の実施状況(出所:厚生労働省「就労条件総合調査」、以下同様)は、2008年時点をみると、退職給付制度がある企業の合計は83.9%(年金制度がある企業が37.5%、一時金制度のみの企業が46.4%)となっており、8割超の企業には退職給付制度がありました。一方、10年後の2018年には、退職給付制度がある企業の合計は77.8%(年金制度がある企業が22.6%、一時金制度のみの企業が55.2%)でした。この10年間で、退職給付制度がある企業が約6%減少し、その中でも年金制度を提供している企業は約15%も減少したのです。
特に従業員数が30~99人の中小企業の状況は厳しくなっています。2008年時点で退職給付制度がない企業が18.3%で、全企業の平均よりも若干高かったのですが、2018年ではさらに悪化し、退職給付制度がない企業は25.4%と、実に4社に1社は退職給付制度がない状況となっています。