廃棄物が増えれば儲かるのが産廃処理業者。そんな「環境に優しくない」事業構造に矛盾を感じた事業者が、産廃を利用したプロダクトアート作りや廃棄物に関するコンサルティング事業など、ユニークな取り組みを行い、注目を集めている。
“ゴミが増えると儲かる”
ビジネスからの脱却
今年10月、東京都港区の虎ノ門ヒルズ近くの空き地に誕生した期間限定イベントスペース「新虎ヴィレッジ」は、ほとんどが廃材で構成された空間だ。
よく見ると、テーブルはソーラーパネル、椅子は茶箱、柵には自転車の車輪が…。一度はゴミとして捨てられたモノたちが、世界で活躍するクリエイターの手によって、カラフルでオープンな遊び心あふれる空間の構成要素として生まれ変わっている。
素材を提供したのは、群馬県に拠点を置く産業廃棄物処理業者・ナカダイ。廃棄物の業界に“デザインの力”を導入し、建築家やアーティストともコラボレーションする、一風変わった業者だ。
産業廃棄物の処理には、原型のまま再利用するリユースのほか、選別・解体して素材を再資源化するマテリアルリサイクル、熱源として利用するサーマルリサイクル、それらができない場合の最終手段として焼却・埋立といった方法がある。それらに加え、同社が約10年前から新たに提案するのが、廃棄物の素材を生かして装飾やアートなどのまったく別のモノとして命を吹き込む方法だ。
一見、面倒にも見える取り組みだが、なぜ始めようと思ったのか。社長の中台澄之さんに聞いた。
「会社の規模拡大を図るなかで、“廃棄物が増えれば売り上げが上がる”というビジネスに疑問を感じるようになったんです。環境のことを考えると廃棄物を減らすべきなのに、会社の立場になると売り上げが減るから廃棄物が減ってほしくないと思ってしまう。その矛盾にどうしても我慢できず、廃棄物の量に頼るビジネスはもう止めようと思ったのが始まりです」
そこで改めて注目したのが、廃棄物そのものの“魅力”だ。「廃棄物からは、その地域の産業や生活、時代の移ろいなど様々なことが見えてくる。実はものすごく魅力があるのではないか」と、2010年のデザインイベントにて、建築家と組んでケーブルなどの廃棄物を使った空間デザインを出展。大きな反響を呼んだという。